巧みな演説で戦前の日本をポジティブに発信

本来なら、アメリカ留学経験があって英語もペラペラ、しかも「友愛」などという看板をかけていることでもわかる通り、メンバーかどうかは知りませんが、フリーメイソンにも近そうな民主党の鳩山由紀夫さんが首相になったとき、アメリカとの関係がさらに良くなると期待しましたが、惨憺さんたんたる結果となりました。それと比べての安倍さんの成功は本当に素晴らしいものです。

アメリカ議会での安倍さんの演説は、戦争については日本が失敗したことは認めつつ、全面的に日本ばかりが悪いというトーンではありませんでした。しかも、その反省点は満州事変以降のことにほぼ限られていて、日露戦争での勝利を含め、戦前の日本というものをむしろポジティブに評価するべきだというメッセージを巧みに盛り込んでいました。

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これはアメリカのリベラルを納得させて、かつ保守派も怒らせない素晴らしい内容でした。日本の主な保守派も「まぁこれならいいだろう」と認めざるを得ないものです。さらに、それに続く「70年談話」で完成させたと思います。

慰安婦問題の日韓合意ではアメリカがサポート

トランプ大統領と最初から良い関係が築けたのは、自民党が伝統的に良い関係の共和党政権ということで当たり前といえば当たり前ですが、民主党と共和党の両方とうまくやった日本の首相、なかでもとくに民主党とうまくやった首相というのは、安倍さん以外にかつていません。

2015年に日韓で結ばれた慰安婦問題の日韓合意にしても、これはアメリカの強い支持のもとで行われたものです。その後に就任した韓国の文在寅大統領は、国内世論に押されて慰安婦の名誉回復を日本に求める意思を示しましたが、もし韓国側から合意破棄ということになれば、アメリカは韓国に対して厳しい対応を行ったことでしょう。

日韓合意については、そもそも甘かったという人もいますが、アメリカのリベラル派政権も巻き込むとすればあのあたりの着地で仕方なかったと思いますし、そうして彼らを巻き込んでおいたからこそ、ワシントンが噛んだ形で後ろから撃たれる心配が少ないのです。