憲政史上最長の8年8カ月にわたり、総理大臣を務めた安倍晋三氏の功績とは何か。評論家の八幡和郎さんは「アメリカの民主党、共和党の両方と良好な関係を築いたのは安倍さんが初めてだろう。日本のマスコミが批判したトランプ大統領とのゴルフ外交も、世界からは賛辞されている」という――。

※本稿は、八幡和郎『安倍さんはなぜリベラルに憎まれたのか』(ワニブックス)の一部を再編集したものです。

ゴルフ場で笑顔を見せる安倍晋三元首相(右)とトランプ前米大統領=2019年5月26日、千葉県
写真=AFP/時事通信フォト
ゴルフ場で笑顔を見せる安倍晋三元首相(右)とトランプ前米大統領=2019年5月26日、千葉県

安倍氏を警戒していたアメリカのリベラル勢力

民主党政権が崩壊後、2012年の総選挙で政権の座に返り咲いた安倍晋三首相が総裁選挙を通じて訴えたのは、「戦後レジームからの脱却」でした。

戦後70年を迎えるにあたって、敗戦国としてのさまざまな制約のなかで組み立てられた国家意識とか国家体制を、21世紀にあって自立的なものとして立て直すという意図だったと思います。その考え方は理解できるのですが、そういう考え方を本気で推し進めると、アメリカ、とくにリベラルなオバマ政権との関係は大丈夫かと心配でした。

当時の大統領はリベラルなバラク・オバマ氏です。日本の自称リベラルの人たちから「安倍晋三はリビジョニスト(修正主義者)」「危険なナショナリスト」と告げ口を吹き込まれたアメリカのリベラル勢力には安倍新首相に対する警戒感がありました。

アメリカのリベラルと日本の自称リベラルはまったく違う思想です。たとえば、中国の人権侵害に対してアメリカではリベラルな人たちほど厳しく、保守派のほうが中国との実利的な関係重視で、あまりうるさく言わないほどです。

欧米のマスコミには日本が歪んで見えている

ただ、朝日新聞とニューヨーク・タイムズの古くからの提携などもあって、アメリカのリベラル系マスコミは日本について、反米容共勢力の立場に立った記事を書いたりします。しかも、それが場合によっては、日本人記者(スタッフ)やもっとひどい場合には半島系などの記者(スタッフ)だったりする、といわれる有り様です。

欧米では先祖がどこから来たとかいうのは、プライバシーとして隠すことではありませんが、日本では隠します。ですから、移民系の言論人がそれを隠したまま、母国寄りの言動をしても背景を考慮されることなく日本の言論空間を歪めることができるのですが、このことは、日本の国際的地位をひどく傷つけています。

また、欧米の主要マスコミが代表的な日本の知識人として重用する人のなかに、共産党の機関紙の常連などがいますが、日本以外の国ではそんな人を国を代表する論者の意見として紹介するなど絶対にあり得ないのです。