いまも語られるオバマ大統領の広島訪問

オバマ大統領は、安倍氏暗殺の報に接したときに、Twitterで、「広島と真珠湾を一緒に訪れた感動的な経験を忘れない」と書き込みました。これについて、キャサリン・ケネディ元駐日米国大使も、安倍元首相がオバマ大統領(大使の在任当時)の広島訪問に尽力したことについて「日米関係における歴史的瞬間」だったといっています。

アメリカでは今も、原爆投下について肯定的意見が多いので、高官の広島訪問は難しく、日米関係にとって棘になっていました。それを、伊勢志摩サミットの帰途に上手な形で実現できたことはたいへんなことでした。

岩国基地にまず飛び、そこで、米軍兵士と自衛隊隊員の前で演説し、それから広島入りするとしたのも、苦心の演出でした。また、安倍さんも任期満了直前のオバマ大統領とともに、大統領の出身地であるハワイでともに真珠湾を訪問したのも、相手に配慮した最高の気遣いでした。

広島平和記念館
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トランプ大統領とは「ケミストリーが合う」

ドナルド・トランプが2016年の大統領選挙で勝利したことは、世界はほとんど予知できず、驚天動地の出来事でした。日本でも外務本省は、その可能性はないとして対策をあまり打ってなかったといわれますが、駐米大使館は、人脈づくりなど手を抜かずにしていて、それが生きたと聞いています。

そして、当選直後の11月に、訪米した安倍さんは、破天荒にもニューヨークのトランプ・タワーにトランプ大統領を訪ね、両者は「ケミストリーが合う」と意気投合しました。前政権がまだ続いているにもかかわらず、次期大統領と会談するというのは異例ですが、オバマ大統領の機嫌を損じないように根回しし、上記の真珠湾訪問でオバマ大統領に花を持たせています。

両者は、オバマ大統領が離任後、トランプ大統領が訪日したときにも一緒に食事などしており、良い関係が続いていました。トランプという人は、そういう、相手が自分と波長が合う相手かどうかをとても大事にします。