「内部進学」「強制帰国」強要疑惑
西日本国際教育学院は1992年に設立された老舗の日本語学校で、1学年の定員が900人を超える大手でもある。
学院を運営する学校法人「宮田学園」は、2014年には「国際貢献専門大学校」という専門学校も開校している。「鎖拘束」問題の前には地元のプロ野球チーム「福岡ソフトバンクホークス」のオフィシャルスポンサーまで務めていた“名門”学校法人なのだが、関係者を取材すると、「鎖拘束」以外にも2つの“疑惑”が浮上した。
その1つが、西日本国際教育学院から国際貢献専門大学校への内部進学強要である。他校への進学や就職に必要な書類の発行を拒み、同大学校に留学生を進学させているというのだ。
近年、専門学校を併設する日本語学校が増えている。留学生を専門学校に引き留め、続けて学費収入を得ようとしてのことだ。専門学校への内部進学を強要する学校も少なからず存在する。現に私は、これまで複数の具体例を取材している。
そしてもう1つの疑惑が、問題があるとみなした留学生を母国へ強制的に送り返しているというものだ。
多くの留学生の証言に加え、私は元職員を通じ、強制帰国させる際の手順が記されたマニュアルも入手した。学費滞納や素行不良の留学生を強制帰国させることも、日本語学校では当たり前のように起きている。
担当者に直撃、「行き過ぎた行為」と証言
これらの疑惑に関しても、私は今年1月、宮田学園の担当者に質してみた。すると、まず「鎖拘束」について、
「(ホアン君が3時間だと主張する拘束は)だいたい1時間くらい。本人の自由意思で鎖を外せる状態だったので、拘束という事実はないと思っております。半ば冗談であったと(ホアン君)本人からも確認していますが、行き過ぎた行為であったと認識しております」
との回答があった。そして内部進学の強要疑惑に関しては、
「強要は誤解がある。中高一貫校と同じように内部進学を勧めているという認識」
なのだという。一方、「強制帰国」疑惑については「留学生を強制的に帰国させたケースはない」としながらも、マニュアルの存在については認め、こんな答えが返ってきた。
「どのマニュアルをお持ちかウチではわからないが、(帰国させる対象は)法律や学校のルールを破って除籍となって、将来日本に在留できなくなる学生。まあ、所在不明となる学生ですよね。こういう学生を無事に帰国させるためのマニュアルです。ただし、中には帰国に応じない学生もいる。そうした不測の事態を考えた手順書とご理解いただきたい」
担当者は、「鎖拘束」についてこそ「行き過ぎた行為」と非を認めたが、内部進学強要や強制帰国の疑惑に関しては、悪びれた様子が感じられない。担当者には「多くの学校がやっていること。ウチに限った話ではない」との思いもあったのかもしれない。