「時間がないからゼリー系飲料」で昼食を取ると…

液体の糖質がいかに血管にとって凶器かが見える、もうひとつのグラフを紹介します。これは、私のものではなく、知人医師のある日の血糖変動を表したグラフです。

協力してもらい、2週間、フリースタイルリブレをつけてもらっていました。HbA1cは5.2%で、空腹時血糖も正常、耐糖能異常もない、いたって健康な人のグラフですが、午後3時頃に血糖値が250mg/dl近くまで跳ね上がっています。

この前に何をしたのかと言えば、昼食をとる暇がなく、おなじみの栄養補助ゼリーを2パック飲んだそうです。

この商品の栄養成分表を見ると、1パックに炭水化物が45g入っています。おおよそおにぎり1個分と同じぐらいの量です。そして、たんぱく質、脂質はゼロ。

炭水化物単品のものは、素早くエネルギーを補給できる一方で、糖が素早く血管内に入っていくので、血糖値の急上昇を招き、同時にインスリンが大量に分泌され、余った糖が中性脂肪につくりかえられて、どんどん脂肪細胞に取り込まれていくという現象を引き起こします。

血糖値の乱高下を招いて結果的に腹が減る

また、このグラフでも急上昇したあとで70mg/dl未満まで下がっているように、インスリンの分泌の良い人は一気にたくさんのインスリンが出るため、反動で血糖値の急低下も招き、低血糖にもなりやすい。それが空腹を生むので、腹持ちは良くありません。実際この医師は空腹に耐えられず17時にオレンジジュースを飲んでしまい、また血糖値スパイクを起こしてしまいました。

この「反動で起こる血糖値の急低下が空腹感を生み、次のエネルギー摂取を早めてしまう」ということは、1000人以上を対象とした研究でも明らかになっています。糖質の多い食事をとったときほど、食後の血糖値の下がりが大きくなり、食事から2、3時間後の空腹感が高まり、次の食事までの時間が短くなり、結果としてエネルギー摂取量が増加したのです(注)

(注)Nature Metab. 2021 Apr;3(4):523-529.

ですから、私は、腸炎などでご飯が食べられない場合などを除いて液体の糖質はおすすめしません。時間がなくて短時間でパッと栄養補給したい場合でも、液体の栄養補給は、結局のところ短時間しかもちません。固形のクッキーなどを1、2枚食べたほうが、血糖値の上昇はゆるやかで腹持ちも良いと思います。