「外交を喧嘩にした女」と呼ばれる日も近い
小泉純一郎元首相は「外交を喧嘩にした男」(読売新聞)と呼ばれたが、「鉄の女2.0」のトラス氏は「外交を喧嘩にした女」と呼ばれるかもしれない。ナンシー・ペロシ米下院議長が訪台したことへの報復として中国が台湾を取り囲んで実弾演習を行った際、外相だったトラス氏は駐英中国大使を呼びつけて中国の真意を問いただした。
トラス氏は外相時代の演説で「日本やオーストラリアのような同盟国と協力して太平洋を確実に守る必要がある。台湾のような民主主義国家が自らを守れるようにしなければならない」と強調した。英紙タイムズは、側近の話としてトラス氏が首相に就任すれば中国はロシアと同列の「深刻な脅威」に位置付けられると報じている。
首相になった暁には中国新疆ウイグル自治区での少数民族弾圧を「ジェノサイド(民族浄化)」と公式に認めると保守党下院議員の集まりで約束したとされる。中国共産党系国際紙「環球時報」は「新首相の対中タカ派姿勢や反中の政治家を外交や国家安全保障担当に任命する恐れがあることから、中英関係に影響が出る懸念がある」との見方を伝えている。
ロシアがウクライナに侵攻する前、トラス氏はセルゲイ・ラブロフ露外相と会談したが、非妥協的なトラス氏との会談をラブロフ氏は「口のきけない人と耳の聞こえない人の会話だった」と皮肉った。戦争が始まると、トラス氏は「ロシアの侵略に抵抗するためにウクライナに行って武器を取ることを望む英国人を支援する」と発言して物議を醸した。
「英国の櫻井よしこ」という表現がピッタリ来るトラス氏は「エマニュエル・マクロン仏大統領は敵か、味方か」と尋ねられ、「首相になったら、言葉ではなく行動で判断する」と答えた。欧州に対してもこんな調子でケンカ外交を続ければ、北アイルランド和平を台無しにする英国のEU離脱を白眼視するバイデン米政権からも愛想を尽かされてしまう恐れがある。