「自分を見つめる鏡」が必要

かつて、私の取り扱ったコンサルティング案件の中に、難治性の病「すぐに評価してしまう病」を抱えた管理職の方がいらっしゃいました。

その管理職の方は、あたかも「目」にスカウター(部下の能力を計測する装置)をつけているがごとく、彼が出会う人の能力・スキルを判定し、優秀な人(というより、自分の意のままに扱いやすいと思われる部下)に発言権を与え、そうでもない人は「放置する」といったことを、おのずと行ってしまうのです。

中原淳『話し合いの作法』(PHPビジネス新書)

話を聞けば、かつてその方が若い頃、そうしたマネジメントを、そのときの上司がやっていて、その方は、それを再生産しているだけでした。

私は本人との話し合いの中で、ご本人がふだん行っている会議を録音・録画して、後で自分1人で見直すようにお願いしました。

動画を見直したその方は、あることに「気づいた」と後で報告してくれました。

「私は、こんなふうに、いつも部下の言葉をさえぎって、発言の最後まで聞けていないんですね」

それ以来、その方が、問題を繰り返すことはありませんでした。大人が学ぶためには「自分を見つめる鏡」が必要なのです。

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