吉田茂の国葬との大きな違い

【増田】戦後、国葬が行われた政治家は吉田茂元首相のみですね。国葬が行われたのは1967年10月31日で、当時、池上さんは高校2年生。当時のことを覚えていますか。

吉田茂元首相(写真=Unknown author/PD-Japan-oldphoto/Wikimedia Commons

【池上】よく覚えていますよ。吉田茂の国葬時には、学校に弔旗を掲げ、1日休校になったんです。国民に対して黙祷の時間も設けられました。仲の良かった同級生は「けしからん」「喪を強制して休校にするのは許せない。登校しよう」と怒っていたのを今でも覚えています。

当時もかなり大きな反対運動がありましたが、結局、政府は押し切って国葬を実施しました。それでも吉田茂の場合には、安倍さんの場合とは違い、亡くなった時にはもう政治家を引退してしばらく経っていましたから、「戦後の日本の基礎を築いた」など、政治家としての歴史的な評価はある程度固まっていました。

【増田】今回、政府は「弔意を強制しない」ことを強調し、学校や公的機関での弔旗掲揚や黙祷についてもそれぞれの自治体に任せる方針を示しており、各府省に弔意の表明を求めるための閣議了解も見送る方向で調整しています。

【池上】岸田首相は国葬の実施に当たり、「国民に弔意を強制することはない」としていますが、一方で8月6日には「世界各国がさまざまな形で弔意を示している。我が国としても弔意を国全体として示すことが適切だ」とも述べています。「国全体」に「国民」は入らないのでしょうか。

学校に関しては各都道府県の教育委員会が方針なり通達を出すことになりますが、例えば安倍さんの選挙区だった山口県なら、実施する可能性は高いでしょう。また、全国一律にしないことでかえって忖度そんたくが働いたり、また議論が巻き起こって賛否が割れたりすることになってしまいます。