9月27日に安倍晋三元首相の国葬が行われる。各社の世論調査では「反対」「評価しない」という意見が多く、岸田政権の支持率低下の要因となってしまった。一体どこに問題があったのか。ジャーナリストの池上彰さんに増田ユリヤさんが聞いた――。(連載第10回)
会見で記者の質問に答える岸田文雄首相=2022年8月31日、首相官邸
写真=時事通信フォト
会見で記者の質問に答える岸田文雄首相=2022年8月31日、首相官邸

旧統一教会の問題で、反対の声が多数に

【池上】岸田政権は、安倍元首相の死去をきっかけに噴出した統一教会の問題、さらには国葬の問題で支持率を大きく減らしています。8月21日に発表された毎日新聞の世論調査では、岸田政権の支持率が36%と、発足以降で最低の支持率になったと報じられています。

新型コロナの感染対策や物価高対策の不十分さに加え、内閣改造後も旧統一教会とのつながりが相次いで判明したことのほか、安倍元首相の国葬を決定したことも支持率低下の要因となっています。

8月8日に発表されたJNNの世論調査では「賛成」が42%、「反対」45%と「反対」が「賛成」を上回ったほか、同日発表のNHKの世論調査でも、「政府が国葬を行うことへの評価」について、「評価する」が36%、「評価しない」が50%となっています。

多くの調査で、安倍さんの死去直後は「国葬賛成」が「反対」を上回っていましたが、これは「選挙演説中に襲われた」「銃撃されたのちに死亡」というショッキングな事態に「安倍さんがかわいそう」と多くの方が思ったこと、そして「演説中を狙うのは民主主義への攻撃だ」という岸田首相の言葉に共鳴したためでしょう。

だからこそ、当初は岸田首相の「国葬に値する」という主張に何となく共感していた人も多かったのです。しかし時間が経つにつれ、ふと冷静になって考えたときに「そもそも国葬とはどういうものなのか」「安倍さんを本当に国葬で送るべきなのか」と思うようになってきたことに加え、事件で一気に注目が集まっている安倍さんをはじめとする自民党と、統一教会の関係が明らかになってきたことで、反対の声が高まってきたのでしょう。

政権交代でもないかぎり「国葬」は覆らない

【池上】銃撃を加えた山上容疑者が悪いことは言うまでもありませんが、それでもこれだけ自民党と統一教会の関係を裏付ける情報が出てくると、これは安倍さん自身の評価にも影響せざるを得ない。先の毎日新聞の世論調査でも、「自民党と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関係に問題があったと思うか」の問いに9割弱が「問題があった」と回答しています。

国葬は9月27日を予定していますが、おそらく国葬への賛成が反対を上回ることはないでしょう。

【増田】国民からこれだけ反対が出てきている中で、岸田首相は「様々な機会を通じて丁寧に説明していきたい」と述べています。政府は実施理由を具体的にどう説明していくのでしょうか。

【池上】「理解を求める」とか「国葬に値する」と言い続けることに終始するのではないでしょうか。「国葬には税金を使うのだから、国会で議論すべきだ」という声もあり、岸田首相は国会での閉会中審査で説明することになりましたが、岸田政権はすでに7月22日に、国葬を行うことを閣議決定しています。閣議決定というのは大変重いものですから、政権交代でも起きない限り、覆りません。いまから思えば、いささか拙速な決定でした。