宿泊者との接点を増やすために「夜鳴きそば」を始める
さらに、約10年前に始めたのが夜鳴きそばの無料提供サービスである。
一見斬新に思えるが、「お客様との接点を増やし、会話が生まれる場が欲しかった」と水野さんは説明する。
「ビジネスホテルのチェックインは簡略的で、お客様と接客するのも、ほんのちょっとの時間しかない。それだと味気ないというか、もっとお客様に喜んでもらうためにできることは何かと考えたんです。そんななか、ドーミーインは全国に展開していますが、地域によっては遠くにしかコンビニがない立地の店舗もあるため、夜食や飲んだ後のシメをホテルで無料提供すれば、お客様の満足度向上につながるのではと思いました」
だが当初は、現場スタッフから困惑した声が上がったそうだ。
「夜は調理スタッフがいないので、『フロントスタッフですけど、ラーメン作るんですか?』と、現場のオペレーションに不安を抱えるスタッフもおりましたが、調理の技術がないスタッフでも作れるラーメンを開発することで、問題解決を図ったんです。メニュー開発は専門のフーズ開発チームが担当し、夜鳴きそばを作るオペレーションも極力負荷がかからないように意識しました」
SNSや予約サイトの意見はしっかり確認する
そのほか、大浴場内には夏季限定でポカリスエットのジャグタンクを置いたり(ドーミーイン池袋のみ)、湯上り後に飲食したくなる乳酸菌ドリンクやアイスを無料で提供したりと、かゆいところに手が届くようなサービスがいくつもある。
こうしたアイデアはどのように生み出されるのか。
コーポレートコミュニケーション部の上遠野恵美さんはこう答える。
「弊社の創業者の石塚晴久はよく『宿泊料金以外のお金をお客様からとってはいけない』と言っていることもあり、社内には『そのアイデアはお客様が喜ぶかもしれないけど、お金をもらうのは違うよね』という企業風土が根付いているんです」
また、SNSやネットの口コミがアイデアの源泉になっていると水野さんは説明する。
「お客様からの要望もよく参考にしていますが、お客様に紙のアンケートを書いてもらうことはしていません。SNSの投稿や宿泊予約サイトの口コミを細やかにチェックし、満足度向上につながりそうであれば、すぐに導入してみる。そこからお客様の声や要望を受け止め、試行錯誤しながらサービス改善を続けているような状況です」