「韓国経済は今も日本に依存しているんだ」は本当か

2012年、ソウルで行われた日韓のレセプションで、韓国経済界の大立者である80歳近い大企業会長が流暢な日本語で、昔は日本企業にいろいろ教えてもらいありがたかったと語り、新橋の小さな飲み屋で一杯やるのが今も好きだとなごやかに話していた。

彼が立ち去ると日本のビジネスマンは、「なんだ、今も変わらないんだ。韓国経済は今も日本に依存しているんだ」と嬉しそうに笑っていた。はたしてそうか。「新橋の飲み屋」は韓国経済の日本依存を意味しているのか?

たまたまだが、私はこの会社の会長室に彼を訪問したことがあった。日本の勲章や賞状、元総理を含む政財界名士との写真が何枚もあった。だが壁の三方には、アメリカ、中国、ドイツの国家指導者や、世界的に高名なビジネスリーダーやスポーツ選手と一緒の写真が、所狭しと飾られていた。どの国も日本より多かった。

道上尚史『韓国の変化 日本の選択 外交官が見た日韓のズレ』(ちくま新書)

彼は日本語だけでなく英語、ドイツ語が流暢だ。日本は、彼らのビジネスの中でいくつかの重要な相手国の1つであるが、それ以上ではない。圧倒的な存在ではなく、ワン・オブ・ゼムに近い。彼らは日本も見ているが、日本の肩越しに広く世界を見ているのだ。

日本製品不買運動、ノー・ジャパンの動きがあれば、「いや、韓国は日本に依存している。ビールも食品も日本のものが好きだから離れられない」と解説する人もいるが、正鵠せいこくを射ているとは思えない。たしかに日本の2、3のビール会社は広く知られ人気がある。「ビールは韓国より日本」と堂々と語る人は多い。しかし、ヨーロッパやアメリカのビールこそ人気が高い。韓国のビールも近年ずいぶん美味しくなった。

2012年に大学街のビールバーに立ち寄った。ヨーロッパを中心に、アジア、北米、中南米ほか世界各国のビールが何百種類も売られていた。日本で見たことのないほど豊富な品揃えの、大きな店だった。日本ビールも各社多く揃えていたが、全体の30分の1程度だ。若いビジネスマンや学生たちが世界各地の多様なビールを楽しみ、にぎわっていた。

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