大会で競う一つは、熱波師のタオルさばきだ。タオルさばきにも名前がついており、代表的な技は以下の通りだ。

・ヘリコプター……タオルを頭上で旋回させて、蒸気を部屋中にいきわたらせる振り方。
・フラッグ……真横から旗のようにタオルを振る。これも部屋中に蒸気を攪拌する役目。
・パラシュート……後ろから振りかぶり下にタオルを振り下ろす。部屋の上にたまった蒸気を一人一人にぶつけるイメージ。
・エンジェル……天使の羽のように横から背負い投げのように前に振る。これも一人一人に熱波を届ける振り方。

北海道から始まった日本のアウフグース

これらのアウフグースの技術はいつごろ日本に輸入されたのだろうか。「日本最古のアウフグース」の経緯を知る秋山温泉(山梨県上野原市)の渡辺純一支配人に聞いた。

秋山温泉の看板(筆者提供)

「元祖は北海道にある札幌テルメ(札幌市北区、現在はシャトレーゼ ガトーキングダム サッポロ)という施設でした。ドイツのバードホンブルグの『タウナステルメ』という温浴施設の支店として、1988年の開業時からアウフグースを導入している珍しい施設だったのです。私は秋山温泉を開業するにあたり札幌に向かい、アウフグースの研修を受けました」

札幌から始まった日本でのアウフグースは、大阪ニュージャパン(大阪市中央区、現在は閉店)やスカイスパYOKOHAMA(横浜市西区)など、各地の温浴施設に広がっていく。そして徐々に知名度を上げていった。

2010年から「熱波甲子園」という熱波師たちがしのぎを削る大会が開かれ、2016年には「熱波師検定」という資格が生まれた。現在、タナカカツキ氏の「サ道」に端を発して空前のサウナブームが巻き起こっており、アウフグースも日本サウナ史上一番の盛り上がりを見せている。

そして2022年7月、満を持してAUFGUSS WMのアジア予選である「AUFGUSS CHAMPIONSHIP JAPAN 2022」がスカイスパYOKOHAMAで開かれることになった。

筆者提供
「AUFGUSS WM」の日本予選「AUFGUSS CHAMPIONSHIP JAPAN 2022」のロゴ。デザインは「サ道」作者のタナカカツキ氏。

「スカイスパYOKOHAMA」が予選会場に選ばれるまで

AUFGUSS WMは2012年から毎年ヨーロッパを中心に行われている、アウフグースの世界大会である。

2022年の出場国は14カ国
・ドイツ
・イタリア
・チェコ
・ノルウェー
・デンマーク
・ベルギー
・スロバキア
・ハンガリー
・ポーランド
・オランダ
・オーストリア
・スイス
・ルーマニア
・日本

大会は、各国で予選が行われる。公式審査員たちが20項目以上の基準に沿って審査し、本選に出場するアウフグースマスターを決める。今年は9月12~18日(12日はオープニングセレモニー)にオランダで開かれる。14カ国の予選を勝ち抜いたアウフグースマスターの中から個人および団体の世界チャンピオンが決まる。

筆者提供
2022年のAUFGUSS WMの会場「Thermen Bussloo」(オランダ)

1回の演目は15分ほど。3種類のアロマを使用し、熱波やタオルさばきの美しさなどを競う。大会で使用する衣装、小道具、アロマ(自然由来のもの)、音楽や映像もすべて選手が用意する。