熱中症にならないよう、効率的に身体を冷やす方法はあるのか。暑熱対策に詳しいスポーツ医学博士の中村大輔さんは「額や首よりも腕と手を冷水につけると良い。さらに、アイススラリーという細かい氷の粒子が混ざった飲み物を摂取すると、より早く深部体温を下げることができる」という――。

※本稿は、中村大輔『暑さを味方につける[HEAT]トレーニング』(扶桑社)の一部を再編集したものです。

レモンの秘密の飲み物
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体温を下げるには「腕と手を冷水で冷やす」

スポーツ活動中の暑さ対策は水分補給・身体冷却・暑熱順化・コンディション把握の4つが重要なポイントです。ここでは身体冷却を紹介したいと思います。

みなさんは、スポーツ活動中に体温を下げようと思ったら身体のどの部位を冷やしますか? 多くの方が額や首と回答されると思います。

実際に、私が日本のトップアスリートを対象に行った調査でも、これらの部位を練習や試合で冷やすという回答が多いのです(※1)

その一方で、熱放散の観点からすると、体幹部と比較して上肢(腕)は、熱放散に適した形態的特徴を持つことがわかっています(図表1)。

上肢は、体幹部と比較して、容積(その場所にある血流量)に対する表面積が大きいという形態的な特徴があります。容積に対する表面積が大きいと、外気の影響を受けやすいことを意味し、外(身体の外)のほうが身体の中よりも温度が高ければ、温度(熱)が外に向かって移動していくことになります。人の体幹部の表面積:容積比を1とした場合、腕は5倍、手は10倍、手指は22倍にもなります。

体温を上昇させたあとに冷却する部位によって体温の低下に差があるかを調べた実験でも、腕や手を冷やした場合の深部体温の低下は、何もしないときや体幹部を冷やすベストを着用しているときよりも、腕と手を冷水につけて冷やしたほうが大きいことがわかります(図表2)。