なぜ今回、日本がAUFGUSS WMに参加できるようになったのか。

公益社団法人日本サウナ・スパ協会副会長、国際サウナ協会理事でもあるスカイスパYOKOHAMA代表のきん​憲碩けんせきさんに経緯を伺った。

「元々はスカイサウナという名前で営業していたのです。そして1996年のスカイビル建て替えの際にスカイスパという名称にしました。スカイスパになったころからアウフグースのサービスは始めていましたね」

最初は「タオルを振り回すサービス」だった

金代表はこう続ける。

「ヨーロッパに視察に行くことが多く、そこで得た知識を社員とシェアしました。アウフグースは温浴施設の裏方であるスタッフが、サウナを舞台に主役になれるよう始めたと言われているので、スカイスパも同じようなスタイルをとっています。ただ最初はアウフグースのショーの要素は取り入れておらず、愚直にアロマ水をサウナストーブにかけてタオルを振り回すというサービスでした」

そこから少しずつ音楽や演劇の要素がアウフグースに組み込まれ、現在の形に変化していったという。

「ここ5年くらいで急激に日本のサウナシーンが進化したと感じています。スカイスパではスタッフ間で様々な意見交換を行い、エクストラアウフグースという有料のイベントを開催したりして、アウフグースマスターがオリジナルの舞や熱波を実演できる場を提供しました」

AUFGUSS WMへの出場を意識したのはいつ頃か。

「2019年9月にオランダでの大会をオブザーバーとして視察した時です。オフィシャルの大会は初めてだったので、やはり衝撃を受けました。技術・熱さ・香り・ショーの構成・アウフグースマスターの所作など細かな採点項目があり、まるでフィギュアスケートのような芸術スポーツ性を感じました。ぜひ日本にこの技術を持ち込みたい、そして日本もこの大会に参加したいと感じた瞬間です」

費用1億円でサウナ室を整備

しかし、AUFGUSS WMへの出場、日本での予選の開催は簡単ではなかったと語る。

「最大の難関が『サウナ室』の広さでした。世界大会の予選を開催するには、最低でも100人を収容できるサウナ室が必要なのです。もちろん、当時の日本にそれだけ大きな施設はありませんでした」

金代表はスカイスパに100人以上を収容できるサウナ室を造ることを決断した。

「2フロア中1フロアを大改築して、2021年11月に100人超収容できるサウナシアター(約71m2)をオープンしました。それと同時に国際アウフグース協会(AUFGUSS WMの運営母体)とも打ち合わせを進め、やっとの思いでアジア初の予選開催地に選ばれたのです」

スカイスパYOKOHAMAの「サウナシアター」。100人超収容でき、ストーブのサウナストーンは合計800キロ。
筆者提供
スカイスパYOKOHAMAの「サウナシアター」。100人超収容でき、ストーブのサウナストーンは合計800キロ。

今回の改築はサウナシアター・クーリングルーム・男女休憩室等で約1億円かかったとのこと。ここまで金代表を掻き立てるものは何か。

「もちろんサウナシアターを建築するのにも相当費用がかかりました。本当はすべてカプセルホテルにしたほうが採算は良いんですけどね。しかし、日本のアウフグースマスターに、世界と渡り合ってほしいという想いが強いです」