しかし、会場での取材の中で、どれだけ観客をショーに引き込むことができるかが最も重要な要素だと感じた。
たとえば個人戦1位の五塔熱子氏は、岩見神楽をモチーフとした演目「八岐大蛇」を披露した。大蛇の面を用いた演武でタオルを使用しない場面も多かったが、観客は70度のサウナ室で演じているとは思えない五塔氏の動きに釘付けになっていた。15分の競技時間は一瞬で過ぎた。
これまでの世界大会のチャンピオンは、基本的な技術や知識、サウナのトレンド、演目のシナリオ(本選ではショーそのものの演出に関わるプロデューサーが演者の他にいる場合が多い)だけでなく、アウフグースマスターたちの巧みな話術などのパフォーマンスも求められる。
初出場の日本勢と世界レベルの差は未知数だ。しかし審査員の一人は鮭&鱸コンビの演目を見て涙を流したと聞き、筆者は日本勢が必ず世界大会で活躍してくれると確信している。
世界と交わり、さらなるレベルアップを目指す
アウフグースの盛り上がりは局地的で、「サウナの楽しみ方の一つ」でしかないかもしれない。しかし、演者と観客がサウナ室という特殊な場所で、ともに汗を流しながらショーを作り上げていく光景はスポーツ観戦のようでもあり、観劇をしている感覚にもなる。
これからヨーロッパのアウフグースマスターと交流を持つことで、日本のアウフグースマスターたちの技術はさらに磨きがかかるだろう。そうした中で、アウフグースがさらに広がっていくことを期待したい。
現在、各地の温浴施設でアウフグースが行われている。アウフグースマスターも増え、切磋琢磨しながらレベルアップを目指している。
読者のみなさんも、ぜひアウフグースショーを体感してほしい。アウフグースマスターが体力を消耗しながらも舞やアロマの香りを通じて伝えたいことを全身で体感できるはずだ。