「さすがメイド・イン・チャイナ。開通前に壊れたよ」

筆者が鉄道に興味を持ったのは、今から6、7年前のケニアだっただろうか。

ケニアの首都ナイロビ郊外、アティ・リヴァー(Athi River)と呼ばれるエリアを移動していたときのことだ。

ふと、幹線道路に沿って建設されている高架橋が目に入った。現地で長年、ドライバーを務めてくれる人間に訊いた。

写真=iStock.com/philou1000
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「なんだあの高架橋は? 高速道路?」
「違う。高速鉄道だ。ナイロビとモンバサを結ぶ」

これが、モンバサ・ナイロビ標準軌鉄道(通称SGR)を初めて見た瞬間だ。

確かに、建設中の高架橋の横には特にアフリカでよく見かける、中国内陸部の建設会社と思われる看板もある(一般的に、中国内陸部の企業が中国政府を代表してアフリカへ進出している)。でも、アフリカではこんな景色は日常である。当時はなんとも思わなかった。

そして数カ月後、再びアティ・リヴァーへ戻る。ふと幹線道路から外の景色に目をやると、前回見かけた高架橋が無い。再びドライバーに訊く。

「あの高架橋、どうしたの?」
「ああ、あれか。早速崩壊したよ。さすが、メイド・イン・チャイナだな。開通前に壊れたよ。ワハハ。でも、どうせまたすぐ造るだろうよ」

国によって鉄道・道路に求める価値は違う

一般的に安全第一と考えられる鉄道網に対してすら、こののんびりとした雰囲気。

さすがアフリカだと思いつつ、ああ、鉄道とはいえ、国によって、求める価値は違うのだな……。

と感じたことは今でも忘れられない。そして、この感覚をさらに裏づける出来事が隣国エチオピアであった。

同国の首都アディスアベバに滞在していたときのこと。まず、アディスアベバ郊外に張り巡らされた高速道路に驚く。運転手が自慢気に言う。

「どうだい、俺たちの国にはチャイナマネーで既にこんな立派な高速道路があるんだぜ」
「いや、でも、中国でも既に路面がボコボコになっている高速道路をよく見かけるよ」
「アハハ、ボコボコになってもいいじゃないか。そもそも、俺たちには中国の借金を返済すらできないんだから」