「万が一」のために飛行機に脱出装置は設置しない

人命軽視というのは恐ろしいことだ。しかし実際には、中国以外の欧米先進諸国の企業が展開する旅客輸送ビジネスにおいても人命の尊重は最優先課題ではない。

もっともわかりやすい例は、私たちが普段から利用している旅客機だろう。もし、本当に人命尊重が最優先課題ならば、高度1万mで事故が起きても安全に脱出できるように、客席ひとつひとつにジェット戦闘機の操縦席と同じ脱出装置をつけてもいいはずだ。しかし、実際には旅客機ビジネスにおいて事故の際の「人命」は経営上のコストとして捉えられているようにしか思えない。

エンジンから出火している飛行機イメージ
写真=iStock.com/Kesu01
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飛行機事故の確率は「1万フライトに1回」という明確な統計基準があるので、その確率で起きる事故のために高額の脱出装置を機体に備えるか、事故の際に一定額の補償金を払うか、どちらが低コストかが慎重に検討された結果、脱出装置は断念され、現在の機体装備となっているのだ。

ただし、人命尊重が最優先課題ではないからといって、安全性に無関心でいいことにはならない。航空業界も、現在「1万フライトに1回」とされている事故の確率を「10万フライトに1回」にしようと努力を続けていることは、忘れてはならない。

ただ、それでも事故によって人命が失われることも視野に入れてビジネスを展開するというのは、安全な運行を持続させるという「サスティナビリティ(持続可能性)」というグローバル・スタンダードとは相容れない考え方かもしれない。しかし、そんな非グローバル・スタンダードな鉄道ビジネスが、特にアフリカの大地では熱帯の植物が葉を繁らせるように発展を続けているのは紛れもない現実だ。