生粋の仕事人間がキャンプにハマった理由
新井さんと「ほりにし」の出会いは、約3年前。仕事人間でほとんど趣味らしい趣味を持たず、休日も「数字を上げる」ことばかり考えていた新井さんは、ある時、このままでは視野の狭い人間になってしまうという危機感を持ったという。
「唯一好きなものが車だったので、とりあえず旧車と呼ばれる昔のランクルを買ってみることにしたのです。インスタグラムで旧車のメンテ方法などを検索していると、旧車のオーナーばかりが集まるキャンプの告知が目に留まりました」
キャンプはまったくの未経験だったが勇気を出して参加してみると、あれよあれよという間にキャンプの虜になってしまった。ただし、ハマり方が一風変わっていた。
「私、もともとインテリアに興味があって、いかに美しい売り場にするかを考えるのも好きだったので、テントの中の導線をどうすれば心地いい居住空間にできるかとか、キャンプギアの色の組み合わせをどうすれば美しいかといったことを、いろいろな職種の人と語り合うのがとても楽しいのです。好きなことについて語り合っていると心が浄化されます」
おそらくここ数年で、キャンプの愛好者が増えただけでなく、キャンプは質的にも劇的な進化を遂げているのだ。
塩や醤油のように「ほりにしある?」
「初めてキャンプに行って驚かされたのが、打ち合わせしたわけでもないのに、みなさんほりにしを持っていることでした。料理の時間になると、塩や醤油と同じような感覚で『ほりにしある?』とか『ちょっとほりにし取って』なんて言っている。『ない』という答えはあり得ない、キャンパーなら持っているのが当たり前のスパイスだったのです」
いったい、ほりにしとは何なのか?
調べてみると、ほりにしとは和歌山県伊都郡かつらぎ町にあるアウトドアショップ「Orange」のマネジャー、堀西晃弘さんが5年の歳月をかけて開発した万能アウトドアスパイスであった。
これ1本で肉、魚、野菜、ご飯、パスタ、サラダとすべての食材の味つけができてしまう。醤油ベースで日本人好みの味ではあるが、フランス料理に使うミルポアパウダーを配合しているので洋食にも合う。つまり、全方位に使えるスパイスなのであり、2019年の発売以来、すでに200万本を売り上げているという。