「キャンプ気分を味わいたいからローソン」が目標

「ほりにしをかけると何でもほりにし味になるので、私は外食に行くときにも常に携帯しているほどのほりにし好きですが、実はコンビニって、キャンプに近い存在なんです。キャンプに行くとき、用意し忘れたものがあればコンビニに寄って買っていくでしょう」

なるほど。要するに、ほりにしがいずれコンビニの定番商品になれば、増加を続けるキャンパーのニーズをキャッチできると新井さんは考えたのだろう。そして、コンビニがほりにしを扱うことを宣伝するには、人気商品であるからあげクンのほりにし味を出すのが効果的だ……と、こんな推理をしたが、どうも正解ではなかったようだ。

いったい、新井さんの狙いは何なのか?

「最終的には、実際のキャンプだけでなく、家の中でもちょっとしたキャンプシーンを味わいたいと思ったらローソンだよね、という形に持っていきたい。それには、からあげクンのようなファストフードから入っていくのが、一番てっとり早かったわけです」

からあげクンは自社の製品だから手を加えやすいのはわかるが、いまひとつ、新井さんの真意がわからない。

「キャンプって、非現実の世界ですよね。ディズニーランドのようなテーマパークが代表ですが、非現実の世界が楽しいのは当たり前です。一方で、コンビニってものすごく現実的な世界ですよね。その超現実的なコンビニの世界に、非現実を持ち込めたら最高だと私は考えているのです。そして、その演出をできるのがアウトドア系の商品なのかなと。つまり『キャンプに行くからローソンに寄ろう』ではなく、最終的には『キャンプ気分を味わいたいからローソンに行こう』となってほしいわけです」

新井さんは「キャンプは非現実の世界」と話す
写真提供=新井健吾
新井さんは「キャンプは非現実の世界」と話す

現実世界にいながらにして非現実の楽しさを味わえたら、まさにコンビニエンスだ。つまりほりにし味のからあげクンとは、現実の世界に非現実を持ち込むための橋頭だったのであり、新井さんの真の狙いは、コンビニとしてアウトドアマーケットに先鞭をつけるだけでなく、現実にはキャンプに行かない人まで、アウトドアマーケットの中に取り込んでしまうことにあったのだ。