「経団連系シンクタンクが積極財政を提言」の衝撃
一方、そうした状況に変化が起きつつある。
さる6月2日、経団連のシンクタンク・21世紀政策研究所より政策提言報告書「中間層復活に向けた経済財政運営の大転換」がリリースされた(以下、「経団連報告書」とする)。
永濱利廣氏(第一生命経済研究所)を研究主幹として、昨年来開かれてきた、同研究所の経済構造研究会の研究成果をまとめている。
これからの日本経済における積極的な財政出動の必要性を主張し、望ましい財政支出の使途について論じる内容となっている。
経団連に限らず、経営者団体による政策提言は、財政再建色が強いといわれている。
そのため、積極財政を主張する報告書が、経団連系シンクタンクから発表されたことを、意外に感じるむきもあるようだ。
もっとも、21世紀政策研究所における研究プロジェクトは、経団連やその会員企業の意向に左右されることなく、参加者の自主的で自由な研究の成果として発表されるものだ。
その意味で、経団連報告書は、経団連の公式な政策見解を示すものではないという点には、ご注意いただきたい。
ちなみに、経団連報告書に基づき、経団連会員やその関係者向けのセミナーが開催されたが、参加者(経営者や幹部社員)の反応は好意的だったようだ。
これまで、経団連をはじめとする経済団体が、「緊縮財政」を提言しがちだったとはいえ、個々の経営者が、必ずしも緊縮財政を志向しているとは限らない。
「オープンシステム」ではなく、「クローズドシステム」による問題整理の必要性に目を向ければ、論理的に「緊縮財政」から「積極財政」へと、見解が変化する可能性もあるだろう。