政府がケチっている金額は「内閣府推計で年33兆円」

一方で、財政支出を無限に拡大できないのもまた確かだ。

ここで注目すべきは日本経済の供給能力――財・サービスの潜在的な生産能力と総需要の関係だ。総需要が供給能力に匹敵している状況で、さらに政府による支出を増加させるとその分民間が利用可能な財・サービスは減少する。

この時、政府支出の拡大は、ディマンドプル型のインフレと民間経済活動のクラウディングアウトをもたらす。

その意味で、財政支出の限界は債務残高ではなく、(国内の生産活動に関する)インフレにある。

供給能力と総需要の差は、内閣府(GDPギャップ)や日本銀行(需給ギャップ)によって推計されている。

これらの推計での潜在GDPは、供給能力の天井ではなく、平均的な供給水準を表している。そのため、現実のGDPが潜在GDPを超過することも可能である。

あくまで目安ではあるが、これらの推計で、GDPがその潜在水準を2%以上超過するようになると、国内の財・サービスに不足感が生じ、それ以上の財政支出の拡大には弊害を考慮すべき状態になる。

ちなみに、内閣府が推計するGDPギャップは2021年末時点でマイナス4%ほど、日銀の推計ではマイナス1.6%ほどだ。

これに基づくと、日銀推計に依拠する場合は年20兆円、内閣府推計に依拠する場合は年33兆円ほどの財政拡大余地がある、ということになる。

もちろん本年後半は2021年よりも民間経済活動が活発になると考えられるが、5月31日に成立した2.7兆円の補正予算案はあきらかに過小だろう。