医師が考える「マスクを外していい状況」は?

その意味では、今回政府が提示した“条件”はひとつのヒントになろう。

まず(2)屋外で他者と身体的距離が確保できる場合――については今すぐ実践してよいと私は思う。私自身、通勤の際は自宅を出てから最寄り駅の改札口まではノーマスクだ。

だが(1)屋内で他者と身体的距離が取れて会話をほとんど行わない場合、(3)屋外で他者と距離が取れない場合でも、会話をほとんど行わない場合――については、たとえ会話をせずとも咳やくしゃみという自己では制御困難な突発的な反射によって飛沫が拡散する場合があることから、目前の相手のことを考えれば、まだ現時点では着用が望ましいのではなかろうか。

(4)2歳以上の就学前の子どもは、他者との身体的距離にかかわらず、着用を一律には推奨しない――についてはどうだろう。そもそも大人でさえしっかり着用できていないのだから、未就学児はもちろんのこと、小中学生でも困難ではなかろうか。子どもたちが教育現場でどれだけ適切に着用できているかを想定すれば、マスク着用の効果がいかほどかは極めて疑問だ。形ばかり着用させても、感染対策上の意味はほとんどなかろう。

本題とはそれるが、子どもの場合は、どんなに軽微な“鼻風邪”であってもすぐに小児科で検査を受けさせることが重要だと私は考えている。現場で感じていることを率直に言わせてもらえば、風邪症状のあるの子どもたちに検査をしようという小児科医は、いまだに非常に少ない現状だ。マスクの適切な着用が困難な子どもたちの場合は、マスクによって感染拡大を防ごうと考えるのではなく、感染児の早期発見を徹底することがむしろ重要だろう。

「とりあえず着けておく」という意識は見直すべき

ポストコロナ社会においてマスクを着用するかしないか。結局は個人個人が新型コロナウイルス感染症についてどう考えているか、マスクの意味をどう捉えているか、そして自分と他者との関係をどのように考えているかという問題に収斂しゅうれんされるのではないかと私は考える。

「新型コロナなどはタダの風邪だ。罹っても大したことはないのだから気にしない」という人は、防御する必要もないと考えてマスクを積極的に外すだろう。ただそのような人でも、自分が万が一無症状感染者であり他者にうつす可能性もあり得るということまで思いを致すことができる人であれば、相手に飛沫を飛ばさぬために(1)と(3)の場合もマスクを装着するだろう。