僕の例で言うと、学校を勉強するための場所、家をリラックスするための場所と決めて、それぞれの場所では決まったことしかしないようにしていました。

つまり、学校では勉強に集中し、クラスメートと話すことを意図的に避け、ひたすら机に向かっていました。一方で、家では勉強道具を机に広げることなく、ただ寝転んでYouTubeを見たり、ゲームをしたりして過ごすようにしていました。

この姿を見た僕の両親は、大変心配していたようですが、ついに「勉強しろ」とは一度たりとも言わずに浪人期の1年間を乗り切ってくれました。僕自身、家は勉強とは切り離してリラックスするための場所として割り切っていたので、もしも家で勉強を強要されるようなことがあれば、ストレスからむしろ成績が落ち込んでいたことでしょう。

「勉強しなさい」に限らず、このような命令形の声掛けは大体が裏目に出てしまいます。直接的な命令形でなくとも「勉強しなくて大丈夫か」「勉強したほうがいいんじゃないか」といったような、「命令」として捉えられるような表現は避けた方がよいでしょう。

大学合格に必要なのは才能や努力よりも「環境」

×「成績は大丈夫?」のような干渉系の声掛け

命令形に次いで、やってはいけない声掛けは、勉強に干渉するようなタイプの声掛けです。親御さんからすれば、純粋な親心や心配から「大丈夫?」と声を掛けたくなるのかもしれませんが、これはまったくやってはいけないことなんです。

「心配するくらいなら負担にならないだろう」と思われるかもしれませんが、それは違います。むしろ、親からの声掛けこそ、受験生にとって一番のプレッシャーになる要因なのです。

本気で大学受験に勝ちたければ、まとまった時間や勉強場所の確保など、さまざまな環境を整えなくてはいけません。しっかりと勉強に集中できる環境を整えているかどうかで、勝率は大きく変わってきます。

「自分が東大に入れた一番の要因は何だと思う?」と質問をすると、僕を含む東大生の多くは「環境」と答えます。決して、自分の生まれ持った才能や努力などではなく、ただ勉強するための環境が整っていたから、自分は偶然東大に入れたのだ、というのです。

よく、上位の大学の合格者は首都圏出身率が高いことや、裕福な家庭の出身率が高いことが指摘されますが、それらはすべて、受験生の勉強する環境が、地方や貧困家庭とは段違いに整いやすいからであると僕は考えています。

その環境を整えるうえで、一番重要なのが「お金」です。予備校に通うにせよ、参考書を買うにせよ、勉強とはお金がかかるものです。さらに、1年間勉強だけに集中できるような金銭的、時間的な余裕を生み出すには、どうしても大量のお金が必要になります。

親という「スポンサー」から受験生が感じるプレッシャー

言うなれば、受験生にとって親とは「スポンサー」です。親がバックアップしてくれているからこそ、なんとか毎日のご飯や寝床に苦労せず、勉強だけに集中できている。そんな生物なんです。

となれば、そのスポンサーからの「成績、大丈夫?」という言葉の重みがお分かりになるのではないでしょうか。大変な金銭的、時間的負担を強いてしまっているからこそ、まともな受験生であればあるほど、「成績は大丈夫か」という問いかけに、プレッシャーを感じずにはいられません。