大地震は再び絶対にやってくる

いっぽうで東日本大震災では、上記の被害に加えて、津波による災害がクローズアップされた。この激甚災害は建物の耐震性だけでなく、建物の立地に対する関心を呼び起こすものとなった。

建物は土地の上に存するから流されていくのも当然だが、肝心の土地が津波によって利用できないほどの状態になる事態は、衝撃的であった。

不動産は読んで字のごとく、動くことのない土地をベースにしたものである。ところが東日本大震災では、土地そのものが津波に洗われ、その上に建つ建物が押し流されるという災害だった。津波が引いた後、土地は再びその姿を現したが、津波に襲われた土地の価値は暴落してしまったのだ。

また阪神・淡路大震災や東日本大震災では、大地震で建物自体の被害を免れたとしても、土地が液状化して、社会インフラである水道やガスなどの配管に大きな被害が発生する現象にも遭遇した。

神戸のポートアイランド地区、あるいは千葉県の新浦安地区といった、埋立地に新たに開発されたお洒落タウンが、地区内を歩くにも苦労するほどのズタズタの状態になったことは記憶に新しい。

こうした大地震が再び日本を襲う。これは確実にやってくる災害である。そして災害に対する備えは、重要であると誰しもが思っていたとしても、実際に起きるまで多くの人は事態を甘く見ているのが現実だ。

金や眺望を求めてタワマンに群がる人々

デベロッパーは儲かるからといって相変わらず東京の湾岸地区に続々とタワマンを建設、分譲している。たしかに湾岸タワマンから眺める東京の夜景は格別だ。実際にタワマン生活に憧れてマンションを買い求める人たちは多く、販売状況は好調を持続している。

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建物は敷地の地下深く、岩盤層に杭を打ち込んでいるので、阪神・淡路や東日本のような大地震が発生しても倒壊することはない、絶対に大丈夫だという。

エレベーターは停止しても、非常用電源が作動して3日間から一週間程度の電力は確保できる、だから安心だという。土地が液状化しても建物内は安全だ、日本の先進の建築技術をもってすれば大災害が起きても資産価値は守られるというのが彼らの論理だ。

でも本当だろうか。東京はやはりタワマンが林立する香港やシンガポールとは違い、地震国の首都だ。

いつかその日がやってきたとき(そしてその確率は30年という短いタイムスパンで考えなければならない)、たかだか人間の叡智=建築技術、だけで大自然の引き起こす災厄に立ち向かうことができるだろうか。

非常用電源が建物を維持するのは時間制限があるだけでなく、共用部の設備の半分か3分の1程度を賄うにすぎない。