ランドローバーの「新型ディフェンダー」が富裕層に人気だ。富裕層向け資産運用アドバイザーなどを手掛ける金融アナリストの高橋克英さんは「新型ディフェンダーの中古車価格が新車価格を上回るほど上昇している。その理由は富裕層のニーズを捉えていることにある」という――。
新型ディフェンダーイメージ写真
画像提供=ジャガー・ランドローバー・ジャパン 広報部
2020年4月から日本で受注を開始した、新型ディフェンダー

新型ディフェンダーの人気が止まらない

高級外車市場のなかでもSUVが席捲するなか、現在、このセグメントで君臨するのは、メルセデスベンツGクラスのゲレンデだ。多くの芸能人も所有するこの車、グレードやオプションなどを積み上げれば2000万円以上になるような超高級車であるが、2018年に40年振りにフルモデルチェンジして以降、リセールバリューの高さもあり、人気に拍車がかかっている。ちなみに、国内の正規ディーラーでは来年2022年モデルの受注受付を既に停止している。新車供給が限られるなかで、この先一層プレミアム化し、中古車市場でのさらなる値上がりも想定されよう。

もっとも、全国区的なゲレンデ人気に負けず、いまそれ以上に都内を中心にホットなSUVがある。それは、ランドローバーの新型ディフェンダーだ。新型ディフェンダーの車両本体価格は551万円からながら、さまざまなオプション装備などを加えると1000万円前後の価格帯にまで跳ね上がる。それにもかかわらず、富裕層を中心に人気を集め、現在注文しても納車まで8カ月から1年は待つという状況だ。このため、中古車価格が新車価格を上回るほど上昇しているのだ。一体、何が起こっているのだろうか。

筆者は、国内外の富裕層向け資産運用アドバイザーや金融コンサルタントとして高級外車を保有する数多くの富裕層と接しており、また、白金台、広尾、西麻布、南青山といった都内屈指のセレブタウンを貫き高級外車も多い「外苑西通り」を10年以上、ほぼ365日運転して通っている。こうした経験も含め、その背景を紐解いてみたい。

「世界的な半導体不足」と「世界的なカネ余り」

新型ディフェンダーにみられる中古車価格>新車価格の背景には、世界的な半導体不足に加えて、「世界的なカネ余り」がある。コロナショックにより、日米欧では、史上最大規模の金融緩和策と財政出動策がとられている。このため、世界中で、株式市場や不動産市場にカネが流れ込み、さらに、溢れたおカネが、資産価値の上昇を見込み、高級時計、高級ワイン、装飾品、高額スニーカー、そして高級外車にも流れ込んでいるのだ。

こうした金融緩和の恩恵を最も受けるのは、既に資産・資金を十分に持ち、その資産・資金を元手にさらなる投資や購入ができる富裕層となる。元々販売台数が限定的な高級外車は、カネ余りにより、ますます「希少品を手に入れたい」という富裕層のニーズを掻き立てることになるのだ。