いまだに根強い“オカルト需要”

——中国共産党というと一枚岩で上意下達が徹底した組織だと思われがちですが、点数を稼ぎたい地方政府の役人の独断で行われた政策もあるのでしょうね。

そう思います。癒着したメーカーが製造した謎の液体を飲ませたり、隔離病棟で太極拳を行わせたり……。コロナ対策ではデジタルを駆使した反面、理解しがたい怪しい対策もたくさんあったのです。

私もコロナに中医がどう貢献したか知りたくて資料を読みました。コロナ対策では太極拳や気功が活躍したとは書かれているのですが、具体的にどう活用され、どんな効果があったのか具体的に書いていない。〈宇宙の力を借りて〉というようなオカルトとしか思えないような記述の資料もありました。

高口康太『中国「コロナ封じ」の虚実 デジタル監視は14億人を統制できるか』(中公新書ラクレ)

コロナの治療にも利用された気功の一種である八段錦は、2003年に中国政府が「健身気功」に指定しました。いわば、政府公認の正しい気功なのですが、「健身気功」が登場するまでは「どんな病気も薬を使わずに治す」「未来を予言する」「地球の爆発を食い止める」などとうたう超常能力的なオカルト気功集団がいくつもありました。

80年代には日本も含めた世界的なカルトブームがありましたが、中国では形を変えつつオカルトの需要は続いています。

現在、漢民族の間でチベット仏教がブームです。輪廻転生を繰り返すチベット仏教の活仏を中国共産党が認定し、検索できるデータベースまで登場した。それは、ニセの活仏が出てきたからです。

合理主義とオカルトが一体になった社会

——中国は、建前としては宗教組織の活動を禁止していますよね。その反動でオカルトに惹かれていくんでしょうか。

そうした側面はあるでしょうね。古くから中国には、合理性とは無縁に見える大衆の社会が広がっていました。中華人民共和国の建国から約70年が過ぎて、世界第2位の経済大国になり、14億の人民をデジタル監視で、合理的に統制しようとしている。

ただ、70年では変えられなかった深層がいまも確かに存在している。過剰なまでの合理主義と、オカルトや迷信が、渾然一体となった社会――それが、中国の真の姿なのかもしれません。

(聞き手・構成=山川徹)
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