頭のいい人は「メタ認知」を使いこなしている

したがって、メタ認知とは、認知についての認知、認知をより上位の観点からとらえたものと言えます。自分自身や他者の認知について考えたり理解したりすること、認知をもう一段上からとらえることを意味します。自分の頭の中にいて、冷静で客観的な判断をしてくれる「もうひとりの自分」といったイメージを描いてみると、少しわかりやすくなるかと思います。たとえば、図表1のようなものです。

出典=『メタ認知

本稿のメインテーマである「メタ認知」は、あらゆる認知活動について想定することができます。たとえば、記憶についてのメタ認知はメタ記憶と呼びます。何かを覚える、思い出すといった活動は、記憶という認知のレベルですが、「どのように覚えたら忘れにくいか」「覚えたことを思い出せそうか」などと考えるのはメタ認知のレベルです。

また、メタ理解は、「私はテキストの内容を理解できているか」「どのような順序で学ぶと理解しやすいか」などと考えることや、理解に関連する知識です。学ぶこと、つまり学習に関しては、メタ学習という概念があり、学習をさらに一段上からとらえた思考や知識を指します。たとえば「どうすればよりよく学べるか」と考えることや、それについての知識などです。

本稿では、効果的な学びによって頭の働きをよくすることに関わる、広い範囲のメタ認知を取り上げていきたいと思います。

写真=iStock.com/Xavier Arnau
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成長過程で誰もが身につける知識

私たちは、「私の記憶は完ぺきではない」ということを知っています。また、「私たちは、多数派の意見に流されやすい」といったことや「講義を聞く時には、忘れないようにメモをとるとよい」ということも知っています。こうした知識は、「水は酸素と水素からできている」「三角形の内角の和は180度である」などの知識とは異なり、自分を含めた人間の認知についての知識です。これをメタ認知的知識と呼びます。

言うまでもなく、この「認知についての」という部分が重要であり、たとえば「人間はほ乳類である」というのは、人間についての知識ではあってもメタ認知的知識ではありません。

メタ認知的知識を持つことは、メタ認知を働かせる上でとても重要です。たとえば、「私の記憶は完ぺきではない」と知っているからこそ、忘れてはならないことを記録しようと考えるわけです。また、自分の記憶とAさんの記憶が食い違っていた時にも、自分の記憶を疑ってみることができるため、「Aさんは、まちがっている」と決めつけてしまうことを避けられるわけです。もちろん、Aさんの記憶がまちがっている可能性もあり、さらには2人ともまちがっている可能性もあるわけですが。こうした、偏りのない判断をする際に、メタ認知的知識が非常に役立つのです。