メタ認知を使ってプレゼンのスキルを上げよう

メタ認知的活動を時系列的に見るならば、次の三つの段階に分けることができます。

①事前段階のメタ認知的活動
②遂行段階のメタ認知的活動
③事後段階のメタ認知的活動

学習活動の事前段階、遂行段階、事後段階のそれぞれにおけるメタ認知的活動をまとめたものが図表3です。たとえば、会議室や教室で、自分の調べたことを発表する(プレゼンテーションを行う)という活動を考えてみましょう。

課題遂行の各段階におけるメタ認知的活動(三宮、2008より)
出典=『メタ認知

まず、事前段階では、「この課題は、私にとってどれくらい難しいものか」「うまくできそうか」を考えるのではないでしょうか。そうした事前の評価や予想に基づいて、目標を設定し、計画を立て、方略を選択することになるでしょう。この時、自分や聞き手の認知特性、課題の特性、方略についてのメタ認知的知識が活用されます。たとえば、「私は、肝心な説明を抜かしてしまうことが多い」「説明が冗長だと、聞き手はたぶん飽きてしまう」「ビジュアル素材を活用すれば聞き手の関心を引く」といったものです。

説明中も点検しつつ、フィードバックを忘れずに

遂行段階では、遂行そのもの、つまりプレゼンテーションに認知資源の多くが用いられるため、メタ認知的活動を十分に行うことは困難です。しかしながら、そうした中でも、私たちはモニタリングを働かせて、「思ったよりも難しい」と課題の困難度を再評価したり、「うまくできているか」「聞き手の理解や関心を得ているか」と課題遂行を点検したり、「計画通りに進んでいない」とズレを感知したりというメタ認知的モニタリングを、ある程度は行っています。このモニタリングを受けて、目標・計画の微調整や、ちょっとした方略の変更といったコントロールを行っているわけです。

三宮真智子『メタ認知』(中公新書ラクレ)
三宮真智子『メタ認知』(中公新書ラクレ)

課題遂行つまりプレゼンがすっかり終わった事後段階では、メタ認知的活動に多くの認知資源を投入することができます。「ある程度までは目標を達成できた」「最後が急ぎ足になったのは、時間配分に失敗したためだ」といった評価や原因判断を行い(メタ認知的モニタリング)、次回に向けて、目標や計画を立て直したり、異なる方略を選択したりすること(メタ認知的コントロール)ができます。

プレゼンスキルを向上させたいと真剣に願う人は、自分のプレゼンをビデオに撮っておき、後で視聴しながら問題点、改善すべき点を洗い出す作業をすることも珍しくありません。教員養成系大学に勤務していた頃、私は実際に、教育実習事前指導の一環として希望者を募り、小学生に対する自らのプレゼンをビデオでふり返りながら改善していくという演習を行っていました。

【関連記事】
「受験勉強のやり方が全然違う」高学歴なのに稼げない人、稼げる人を分ける"ある能力"
「ダメな慶應とデキる慶應は簡単に見分けられる」期待外れな高学歴を見抜く"あるポイント"
「高いIQも幅広い専門知識も役に立たない」10兆円投資家バフェットがそう言い切るワケ
「きれいごとを言っても、結局は金儲けでしょ?」その問いに稲盛和夫が出した渾身の答え
会議で重箱の隅つつく「めんどくさい人」を一発で黙らせる天才的な質問【2020年BEST5】