青年期前期以降は、目覚ましい勢いでメタ認知が発達するため、仲間同士で学習方略についての情報交換がしやすくなります。そこで、教師が指導するだけではなく、クラスメイトや友人と学習方略について話し合う機会があるとよいでしょう。これはもちろん、大人の学びについても言えることです。

「分からないことを分かっている」ことの大切さ

「あっ、わかった!」とひらめいたり、「なんか、ピンと来ないな」ともやもやしたり、行き詰まっている問題に対して「見方を変えてみよう」と仕切り直したりすることがあります。こうした活動や経験をメタ認知的活動、あるいはメタ認知的経験と呼びます。ここでは、メタ認知的活動という言葉で呼ぶことにしましょう。メタ認知的活動は、メタ認知の知識成分であるメタ認知的知識とは異なり、頭の中で起こる活動です。

私たちの頭の中では、メタレベルでさまざまな活動が起こっています。先ほどの「あっ、わかった!」や「なんか、ピンと来ないな」というのは、自分で自分の認知状態を観察しているようなものであり、メタ認知的モニタリングと呼ばれます。一方、「見方を変えてみよう」と仕切り直すのは、認知を制御するわけですから、メタ認知的コントロールと呼ばれます。この制御の中には、微調整などの調整も含まれます。

こうしたメタ認知的活動も、実は私たちが日頃から、ある程度自然に行っていることです。メタ認知的活動を活発に行うことによって、認知活動の質は高まっていきます。

ホワイトボードに貼った円グラフに赤を入れようとする女性の手元
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説明や教えることにとても役立つ

メタ認知的活動は、自分ひとりで考えたり覚えたりする個人内での認知活動においても役立つものですが、とりわけ人に何かを伝えたり教えたりする場合には、さらに重要な役割を果たします。

メタ認知的活動の1つに、メタ認知的モニタリングがあります。これは認知状態をモニターすることです。たとえば、「ここがよくわからない」「なんとなくわかっている」といった認知についての気づきや感覚、「この問題にはすぐ答えられそうだ」といった認知についての予想、「この考え方でよいのか」といった認知の点検、「十分に理解できた」といった評価などが、これに当たります。

メタ認知的コントロールとは、認知状態をコントロールすることです。たとえば、「説得力のある意見文を組み立てよう」といった認知の目標設定、「結論から考え始めよう」といった認知の計画、「この例ではわかりにくいから、他の例を考えてみよう」といった認知の修正などが、これに当たります。これらをまとめたものが、図表3です。