相手に伝わるプレゼンをするにはどうすればいいのか。大阪大学名誉教授の三宮真智子さんは「私たちは成長過程で『メタ認知』という知識が身についてくる。これを使いこなせば、説明や教えることが格段にうまくなる」という――。

※本稿は、三宮真智子『メタ認知』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。

会議場で聴衆の前でプレゼンするビジネスマン
写真=iStock.com/baona
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「メタ認知」ってなに?

「メタ認知」という言葉を、最近よく目にするようになりましたが、少し意味がわかりづらいという声も聞きます。メタ認知とは、本来、どういう意味なのでしょう?

「今日は朝から、頭の調子がよくないな。体調が悪いせいだろうか」
「さっきのAさんのプレゼンは、少しわかりにくかった。話の順序を変えるとよくなるのに」
「しまった! 同僚への説明の中で、大事なポイントを抜かしてしまった」
「息子をいきなり叱りつけたのはまずかった。まずは怒りを抑えて、冷静に話せばよかった」
「せっかくスーパーに行ったのに、卵を買い忘れた。面倒がらずに買い物メモを作るべきだった」

日常生活の中で、このように考えたことはありませんか? 実は、頭の中に湧いてくるこうした思考は、メタ認知と呼ばれるものです。もちろん、メタ認知はネガティブな内容ばかりではありません。次のようなポジティブなものもあります。

「Aさんの話が聞き手を引きつけるのは、たとえ話が適切だからだ」
「レポートの内容が頭の中でうまくまとまらなかったが、いったん書き始めると、スムーズに進むものだ」
「最近、うちの娘は、うまく意見を言えるようになった。論理的な思考ができるようになったのかな」

このように私たちは、ふだんからある程度、メタ認知を働かせているのです。

記憶する、思い出す、理解する、考える…

「メタ認知とは、一言で言うと、認知についての認知です」

私は講演の冒頭で、このように話し始めることがあるのですが、そう言われても、初めての人にはピンと来ないでしょう。そもそも認知とは? それは、頭を働かせることです。心理学では、見る、聞く、書く、読む、話す、記憶する、思い出す、理解する、考えるなど、頭を働かせること全般を指して認知(cognition)と呼びます。頭の中で行われる情報処理と言い換えることもできます。

私たちは朝起きてから夜寝るまで、何らかの情報を処理していますから、ほぼ一日中認知活動を行っているわけです。私の専門でもある認知心理学と呼ばれる研究分野は、この頭の働きについて研究する分野です。

cognitionは「認識」と訳されることもあり、現在では一般に認知心理学と訳されるcognitive psychologyを「認識心理学」としている本もあります。同様に、「メタ認知」が「メタ認識」と表記されている場合もありますが、両者は同じ意味です。また、「メタ」という語は、ギリシア語に由来する接頭語であり、「~の後の」「高次の」「より上位の」「超」「~についての」などという意味を表します。