無意識に発している「敵意のシグナル」

そこで彼女は手始めに、いわゆる「都会のしかめっ面」をするのをやめた。厳しい環境や大都会で育った人の表情には、この「都会のしかめっ面」がよく見られる。この表情は「私は敵であり、あなたの友人ではない」というシグナルを、言葉を発することなく、周囲の人に明確に伝える役目をはたしている。

「私に近づかないで」「俺にかまうな」という警告を発しているのだ。するとカモをさがしていた者は、この表情を浮かべている人を狙おうとしなくなる。だから「都会のしかめっ面」は、タフな環境で生き抜くための貴重なツールとなる。

しかし、友人をつくりたい場合は〈敵意シグナル〉ではなく〈好意シグナル〉を送らねばならない。シグナル次第で、他の学生ともっとスムーズに親しくなれるのだから。

眉をひそめて厳しい表情を浮かべている人物に近づいていきたいと考える人はいない。

ところが、こうした表情を浮かべている人は、自分が〈敵意シグナル〉を送っていることに気づいていない。

視線と表情で好意と敵意を見分ける

大都会の路上には、よく施し物を求める人がいる。なかには、しつこく食い下がってくる人もいる。だが、彼らは誰かれかまわず声をかけているわけではない。いかにもお金を施してくれそうな通行人に狙いを定め、あとを追いかけるのだ。

ジャック・シェーファー、マーヴィン・カーリンズ『元FBI 捜査官が教える「心を支配する」方法』(だいわ文庫)

彼らがどうやってお人好しを見分けているかといえば、〈好意シグナル〉と〈敵意シグナル〉を見分けているにすぎない。

通行人と目があえば、成功の見込みは高くなる。相手が笑みを浮かべてくれれば、見込みはもっと高くなる。さらに同情しているような表情を浮かべてくれれば、見込みはさらに高くなる。

路上でよくお金を無心される人は、見知らぬ人が思わず声をかけたくなるようなシグナルを無意識のうちに送っているのだ。

一方、無心するほうは、一対一で接触しないかぎり、お金を恵んでもらうのは不可能であることを承知している。

だから彼らは、いかにもお金を恵んでくれそうな人のあとをしつこく追いかけて一対一にもち込もうとする。こんな場面では「都会のしかめっ面」をさっと浮かべればいい。

あなたの態度やしぐさは、周囲の人にシグナルとなって届いている。目的意識をもってサッサと歩くこと自体もシグナルだ。「自分はえじきにはならない」という意思表示をしているのだ。健康で、動きが速く、常に警戒を怠らないヒツジは、ライオンのターゲットになりにくいのだから。

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