なぜ一人で決断してはいけないか

重大な決定は一人で行ってはならない。他の人々に相談することで、異なる意見を知ることができ、結果、より多くの情報を基に決定を下すことができ、決定の影響を受ける人々の支持を勝ち取れる公算が高くなる。

だがその際、リスクも認識する必要がある。「大勢を参加させたら、ほぼ確実に小さな集団が主導権を握って決定し、残りの多くの人の意見がほとんど反映されないおそれがある」と、フィンケルシュタインは言う。

また、グループの戦略的方向性を変える、新しいマネジャーを採用するというような重要な問題については、多くの意見を聞く必要があるが、最終的には一人の人間が責任を負う必要がある。最終的には「リーダーが決めなくてはいけない」と、フィンケルシュタインは言う。

最初の直感は、ときに正しいこともあるが、おそらく論理的思考に基づいてはいないだろう。自分の最初の反応を疑ってかかり、もっとデータを集めた時点でそれを吟味することが大切だ。また、自分の考えの論拠を必ず他の人々に説明しよう。

「直感で決めることのリスクの一つは、こちらの思考プロセスを人々が理解できないことだ」と、ロベルトは「ハーバード・マネジメンター」の意思決定に関する項で述べている。

「大規模な秩序だった分析を行う場合は、人々はそのプロセスを追っていけるが、直感の場合は違う。直感は稲妻のようなものだ。リーダーがどのような経緯でその結論に達したのか、人々には理解できない」

フィンケルシュタインが指摘しているもう一つの落とし穴は「予断」である。意思決定プロセスの早い段階で初期情報に基づいて意見を固め、後になってわかったことがあってもその意見に固執することだ。

「このタイプは自分の見方を裏づけるデータや実例は挙げるが、それと矛盾する情報は無視する」と、彼は言う。こういったときは要注意で、別の見方があるのではと自問する必要がある。自分の意見に自分で反論をぶつけ、当初の想定を批判的な目で再検討するか、信頼できる同僚にその役目をやってもらおう。

多くの人が、現在の課題を過去の経験と関連づけて重大な決定を下す。これは役に立つこともあるが欠点もある。経験が現在の課題と関係がなくても、人々は過去に頼る傾向があると、フィンケルシュタインは言い、ロベルトも同じ指摘をする。

「問題は、2つの状況の類似点だけに注目して、相違点は概して無視することだ。だが、往々にして相違点こそが問題のあるところなのだ」。過去の経験はデータの源泉としては役立つが、それらの経験が現在の問題にどれくらい関係があり、役に立つかをよく考えよう。