「フックの数」をなるべく増やす

ポイントはフックとなる言葉が、一つではなくいくつも入っていることです。どの言葉が刺さるかは人それぞれ。「リクルート」「MBA」が刺さる人もいれば「御社の」「オーダーメイド」が刺さる人もいるはず。なるべく多くの接点を作り、それを最初に伝えることで、相手の興味関心を一気に惹きつけるのです。

もちろん、一つひとつの言葉に引きがあるのは当然です。リクルートという言葉は今も昔も研修最大手として人事系の人には効果抜群ですし、MBAも今と比べてあまり一般的ではありませんでした。「オーダーメイドで」という言葉は、相手に特別感を抱かせるキーワードになりました。

ちなみにこの営業電話が業界でも評判となり、私は「研修業界のフェラーリ」と呼ばれることになりました(「オーダーメイド」と何度も繰り返していたから、同じオーダーメイドのフェラーリと対比されたのです)。

あなたが伝えたいことの中で、相手が特に注目をするであろう言葉はなんでしょうか。そして、それを一つだけでなく、三つでも四つでも重ねて、一気に言い切る。それが電話営業のポイントです。

このアプローチにより、たった一人の会社が上場企業を含む百数十社の研修を受注。その中には日本を代表する企業も数多くあり、中でも「◯◯社を制するものが日本を制す」とまで呼ばれていたある会社からも見事に受注し、その後十数年にわたって研修を担当することができました。

思い返しても、営業において「これ」しか言わないという決めゼリフを使ったからこそ、今の自分があると思います。

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売れる営業と売れない営業の根本的な違い

売れる営業と売れない営業の違いは何かをひと言で表現しろと言われたら、こう答えます。

「売れない営業は製品を語り、売れる営業はベネフィットを語る」

これもまた、実例を見てもらったほうが早いでしょう。食品加工機械を扱う会社の例です。

×「この製品は今期、弊社が最も力を入れているもので、従来の2倍のスピードで野菜のカットができる上に、対応できる野菜の種類も弊社従来品の3倍に。消費電力も抑えられていますから、エコでもあります。また、サイズも従来品の4分の3に小型化することに成功しました」
◯「この製品を導入してもらえれば、野菜のカットなどの下準備の時間が半分になりますよ。サイズも小さいのでスペースも広がります」

前者は自社の製品の性能をこれでもかと羅列していますが、すべて「売り手目線」であることがおわかりいただけると思います。