ベネフィットを語れば短い言葉でより強い印象を与えられる

特に最初の「今期最も力を入れている製品」のくだりは、買い手側にとっては「知らんがな」という話ですが、世の中の営業パーソンは往々にしてこうしたセールストークを使いがちです。「今イチオシの商品」「目玉商品」とは、言ってみれば「自分たちがただ売りたいだけの商品」と同義であることに気づいてください。

一方、後者の例では、「準備の時間が半分に」「スペースも広がる」と、相手にとっての利益(ベネフィット)を伝えていることがおわかりいただけると思います。こうすることで相手には、実際にその製品を導入した際のメリットが、イメージとともに伝わります。それが大事なのです。

「売れない営業は製品を語り、売れる営業はベネフィットを語る」という意味がおわかりいただけたかと思います。

語るべきは製品そのものではなく、それによって顧客にもたらされる利益(ベネフィット)。それを端的に伝えるほうが、長々と製品を語るよりもよほど短い言葉でより強い印象を与えることができるのです。

ベネフィットは「1本」に絞れ

さらに言えば、「悪い例」では、情報をあれもこれもと詰め込みすぎです。これでは「なんかいろいろすごいらしいけど、何がすごいのかよくわからなかった」という印象になってしまいます。

大塚寿『できる人は、「これ」しか言わない』(PHP研究所)
大塚寿『できる人は、「これ」しか言わない』(PHP研究所)

やはり訴求力を高めるには、最も相手に刺さると思われるベネフィット1本に絞ったほうがいいでしょう。

展示会に行くとよくあるのが、大きなスペースを取ってあれもこれもと製品を紹介しているブースには閑古鳥が鳴いているのに、狭いブースでたった一つの製品を紹介しているところには人だかりができていること。これもまた、「ベネフィットは絞ったほうがいい」という好例だと思います。

もし、あなたが扱っている製品のベネフィットが1本に絞り込むことができなかったら? それはひょっとすると、製品自体のコンセプトがぶれているのかもしれません。

あれもこれもではなく「ここがすごい」で勝負する。それは、営業だけではなく製品作りにも、さらに言えばあらゆる企業に求められていることなのだと思います。

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