目指すは「ぬくもりのあるインターネット」
【東】歴史認識のような国際問題についても、基本的に同じことが言えるのではないかと思います。だから、ゲンロンやシラスのスタイルを、もっと国境の外側にも出していきたい。いまは、国が違うと、言葉が違うから長い会話ができない。けれど、長い会話ができないと「が」の向こう側に到達できないんですよ。
とはいえ、そういう状況も自動翻訳が変えつつある。あと10年、20年すれば自動翻訳も精度が上がり、文学も含めてかなりのことが自動翻訳可能になるだろうと期待しています。シラスは、そういう環境が整ったときに、国境を超えた濃密な議論の空間になれるようにいまから布石を打っておきたい。
【辻田】ゲンロンやシラスのスタイルを世界に発信する。コミュニティのぬくもりも伝えられたらいいですよね。
【東】そもそも、かつてネットは開放的でありつつも独特の親密感があった。1990年代から2000年代にかけてはむしろその印象が強くて、シラスにはその時代の感覚が入り込んでいるんだと思います。シラスはいわば「ぬくもりのあるインターネット」を目指しているんです。