野村克也氏はメモ帳と鉛筆でID野球を確立した

次に「②目標達成系」ですが、これは目標とその達成手段をノートに整理しながら、自分の夢や目標を実現していくタイプです。目標達成の過程で問題が起きれば、原因と解決策まで掘り下げノート内で問題解決をはかる人もいます。

目標達成系で私自身が参考にしているのは、アスリートの方が多いですが、野球界からヤクルト・阪神などで監督をつとめた野村克也監督に注目します。後にデータを駆使した戦い方は「ID野球」と呼ばれるようになりましたが、その原点は若い頃より学びを整理していたノートにありました。人の話を聞き、読書をし、その内容をすべてメモしていったそうです。

野村監督のノートの特徴は、単に情報を書くだけではなく、自分なりの解釈も書き加えていったところです。それにより理解と思考を深め、独自の戦い方を体系化していったのです。

また、寝ているときも、テレビを観ているときも、気がついたことをすぐに書き留められるよう、必ず近くにメモ帳と鉛筆を用意していたとも言われています。

このノートの習慣を選手にも行うように指導したそうで、愛弟子達は野村監督のアドバイスを書き留めていきました。これらは“野村ノート”として、現在も人材育成につながっています。

悩みを書き出すことで自殺を踏みとどまった鉄鋼王

最後に、「③癒し系」で驚きのエピソードをご紹介したいと思います。癒し系とは書く行為を通じて自分自身を癒し、救うことに成功したタイプです。

1800年代に活躍した世界の鉄鋼王アンドリュー・カーネギー氏のお話です。同氏は世界史上2位の億万長者(1位はロックフェラー)。それほどの億万長者になっても悩みは尽きないようで、仕事や家庭で何重にも問題が重なり、同時並行で対処するカーネギーは心を病んでしまいました。そして、ついにもう耐えられない、自殺だ! と自室にピストルを持って引きこもったそうです。

ところが、死ぬ前に遺書くらいは書いておこうとなり、便箋とペンを取り出し、悩みを書き出していったところ……。1000個以上あると思いこんでいた悩みは、70個だけだったそうです(凡人には70個でも既に多すぎですが)。

鈴木進介『仕事は1冊のノートで10倍差がつく』(明日香出版社)

そこで、あれ? たった70個? 俺はこんなことで悩んでいたのか……そう考えたカーネギーは、明日対処できること、来週対処してもいいこと、すでに解決できないことなど、カードのように便箋をちぎって仕分けしていきました。最後に、「解決できないこと」の問題は頭の中から捨てて、直近で出来そうなことに的を絞ったと言います。

その後、完全に自意識を取り戻したカーネギーは、なんと書き殴っていた遺書のようなメモと用意していたピストルを机の引き出しにしまい、奥さんと夕食にでかけていったそうです。

このように、偉人たちの背景にはノートがあり、ノートによって人生を切り拓き、ノートによって救われた人がいたからこそ、人類が前進してきたことに気づきます。

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