IT企業のできる人は会議でノートをとっている

私のクライアントにはIT系企業も多く存在します。

IT系企業とお付き合いしだした当初は、面食らうことがたびたびありました。なぜなら、会議になるとしきりにノートをとる人が多かったからです。特に社内でも指折りに成果を出している方や頭がいいと前評判を聞いていた方は、例外なくノートをとっていました。IT企業だから、作業は完全にペーパーレスで進めると思ったのに驚くべきことです。

ノートをよくとる方々に話を聞いてわかったことがあります。

それは、PCやスマホなどデジタルツールより、ノートを取る方が「スピーディーに情報の整理ができ、思考も深めやすい」ということです。

彼らが言っていたことを要約すると次のようなことです。

単純に文字を整理するだけであれば、デジタルツールに勝るものはありません。しかし、仕事で大切なことは文字の整理ではなく、「情報を整理し、次の行動につなげるための思考を深めること」です。

また、情報の整理で大切なことは、どこが重点ポイントなのかメリハリをつけることです。ノートに手書きをしておけば、平坦なデジタル文字を見るときよりも、感覚のまま書き込まれた線引きや図解、はたまた筆跡、筆圧ひとつで重点ポイントが一目瞭然であり、全体像から一気に整理しやすくなるのです。

プレゼン資料を作るときはまずノートを開く

私自身このことを痛感するできごとがありました。

20代半ばのある日のこと、重要な商談前に気合を入れてパワーポイントで資料を作成して顧客向けのプレゼンに挑みました。ところが、自分でつくった資料なのに、口からスムーズに内容がでてきません。「あれだけ時間をかけたのに……」。プレゼン中は額から冷たい汗が流れてきた感覚を昨日のことのように覚えています。

会議で話す人
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです

PCでつくった平坦なデジタル文字が頭に入っていなかったのです。それ以来、いきなりPCに向かわず、ノートに重点ポイントを手書きで整理してからまとめ、最後に清書としてPCを使う方式に変えました。そこからは、顧客にも内容の重要ポイントが伝わりやすくなり、商談では連戦連勝が始まったのです。

書籍を作る際も同じです。いきなりワードを開いて原稿を書き始めるなんてことはしません。まずは、ノートに自分が書きたい内容のポイントを書き出します。次に優先順位をつけるために、赤ペンで図示したり◎や★印でマーキングして、整理して構成を考えていきました。

また、本稿で図が登場しますが、必ず先に手書きでノートにイメージを書いています。そこにメモ書きを加えながら、図に加え文章そのものにも深みをつくっていく方法をとっているのです。PCで清書するのはあくまでも最後です。