それに旧ソ連崩壊に伴う混乱を経験していない若い世代ほど、プーチン体制に対して強い不満を抱えていることもまた確かである。とはいえ、統一ロシアはそれほど議席を減らさなかった。この結果は一筋縄ではいかないロシア国民の複雑な有権者の思いを反映しているが、これでプーチン体制が盤石かと言われると、そうは問屋が卸さない。

歴史を振り返ると、人々の不満が臨界点を超えたときに、ロシアでは大きな政治変動が起きてきた。帝政ロシアも旧ソ連も、革命という形で自壊してきたわけだ。自らの体制が同じてつを踏まないためにはどうしたらよいか。旧ソ連の秘密警察KGBの職員としてソ連崩壊を目の当たりにしたプーチン大統領が考えていないはずはない。

改めて明らかとなった長期政権の引き際の困難さ

プーチン大統領は今年10月で69歳。まだ若いとも言えるが、相応に高齢でもある。一方で、プーチン大統領は後継の指導者候補を育成することには成功していない。それに、旧ソ連崩壊の混乱を知らない若い世代は着実に増えている。今回の総選挙を無事に乗り越えても、権力を禅譲するまでのハードルは依然として高いと言えそうだ。

こうした問題は、権威主義体制に特有ではないのかもしれない。民主主義体制でも、長期安定政権の後には権力のバトンタッチがうまく行かないものだ。月末に控えたドイツ総選挙では、4期16年の長期政権を率いたメルケル首相が引退する予定であるものの、与党・キリスト教民主同盟(CDU)は大敗を余儀なくされる見通しである。

とはいえ有権者の多くは、ドラスティックな変化を望んでいるわけではない。むしろCDUを大連立のパートナーとして支えた社会民主党(SPD)に、メルケル首相と同じ路線の継続を望んでいる。一見するとアンビバレントな現象だが、これもメルケル首相が後継のリーダーの育成に失敗した結果であり、ドイツ政治の混迷をよく示している。

日本でもまた、長期安定政権を率いた安倍前首相が退いた後、菅首相が1年で退任を余儀なくされるなど、政治は揺れている。任期満了に伴う総選挙が11月にも予定されているが、日本にも変化を望む革新的な民意がある一方で、安定を望む保守的な民意も存在する。両者の相克の末に、総選挙はどのような結果に落ち着くのだろうか。

有権者の多くが消去法的な理由から現状維持を望んでいるという点では、ロシアもドイツも、そして日本も共通しているのではないだろうか。それは有権者が保守化しているというよりも、有権者の関心を引こうとするがあまりに野党勢力の主張が荒唐無稽なものになっていることが生み出した現象であると言えるのかもしれない。

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