退職金制度廃止と、確定給付年金廃止→企業型iDeCoへの移行

では、企業はこの退職金をどうしていくつもりなのか。

その前に退職金制度の仕組みを簡単に説明したい。一般的に退職金には「退職一時金」と、老後の年金として受け取る「退職年金(企業年金)」がある。

退職一時金は主に自社で積み立て退職後に支給する。企業年金は国が用意した制度を使い会社が外部の金融機関に積み立てる。

ただし、退職一時金は仮に業績の悪化や倒産すればもらえなくなる可能性もあるが、企業年金は受給権が保護される。

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また企業年金には以下の2つがある。

●会社が積立金を運用する「確定給付年金」(A)
●会社が拠出した掛金を社員が自己責任で運用する「確定拠出年金」=企業型iDeCo(B)

大企業では退職一時金と企業年金を併用している企業も少なくない。

それでは企業は今後、退職金をどうしていくつもりか。実はすでに現実に進行していることから想定されるのは次の2つだ。

① 退職金制度自体の廃止
② 確定給付年金(A)を廃止し、企業型iDeCo(B)への全面移行

退職金制度を廃止する大企業、中小企業とも急増している

退職金制度を廃止する企業は年々増加している。退職金に関して5年ごとに厚労省が大規模に行う「就労条件総合調査」(従業員30人以上)によると、退職金制度がある企業は80.5%(2018年)。その15年前は86.7%(2003年、25年前は92.0%(1993年)だ。廃止企業が徐々に増えている。

ちなみに中小企業になるともっと多い。東京都内の中小企業で退職金制度がある企業は2020年7月時点で65.9%(東京都産業労働局調査)。前回調査の2018年の71.3%より5ポイント以上減少し、廃止企業が増加している。中小企業を中心に今後も退職金廃止の企業が増加していくことは間違いないだろう。