老後の生活は年金だけで暮らしていけるのか。『もらう×増やす×出費を減らす 年金最大化生活』(アスコム)を書いた社労士みなみさんは「年金をもらい、税金を安くする工夫をすれば十分生活していける。地域によって異なるが、夫婦合わせた年収が366万円以下の世帯は使って利用してほしい制度がある」という――。
手を握りしめて祈る
写真=iStock.com/hxdbzxy
※写真はイメージです

税金をムダに払う必要はない

よく「年金だけだと生活できない」と聞きます。

けど、それって本当なのでしょうか?

もちろん、人によって状況が違うので一概には言えませんが、社会保険労務士とファイナンシャル・プランナーの資格を持つ私の経験から言わせていただくなら、ほとんどの人は年金と、少しの工夫だけで生活できます。

では、その工夫とは何か? もちろん収入を増やす努力も必要ですが、出ていくお金を減らすことも大事です。ただし、生活費(特に食費)を削るようでは、生活に潤いがなくなっていきます。そこで注目したいのが「税金」です。

年金にも税金はかかります。その税金をムダに払わないことも、私が提唱する年金最大化生活のテクニックのひとつです。

「そもそも、税金を払わずに済んだらいいのに」という願いをかなえる方法があります。それは「住民税非課税世帯」になることです。

住民税も所得税もかからない方法

住民税非課税世帯になると、なんと住民税だけでなく所得税もかからないのです。さらに、次のような特典があります。

● 給付金が受けられる
● 国民健康保険料が安くなる
● 介護保険料も安くなる
● 医療費・介護費用が軽減される
● 介護施設入居中の居住費・食費が減額される

給付金には、様々な種類がありますが、一例として2023年には電気・ガスなどの物価の高騰に対する援助として、1世帯あたり3万円が支給されました。

「住民税非課税世帯」になるには、条件があります。収入が年金のみの場合、独身者であれば年金155万円以下、夫婦であれば世帯主の年金211万円以下で配偶者は155万円以下であることです。夫婦で合わせて366万円までは、大丈夫ということです。

実は、意外に知られていないのですが、厚生労働省の調査によると高齢者の全世帯のうち約半数は住民税非課税世帯なのです。

ちなみに、ここでいう年金とは、国民年金と厚生年金だけではありません。確定給付年金(DB年金)や確定拠出年金(DC年金)といった企業年金も含まれます。

この基準、実は地域によっても異なります。大都市部(1級地)は先述の金額なのですが、地方中核都市(2級地)では世帯主203万円、配偶者・独身者152万円です。さらに地方(3級地)だと世帯主193万円、配偶者・独身者148万円です。

ここでは、例として1級地についてお話ししています。