50歳以降の人生はどう過ごすのがいいのか。会社を47歳で辞し、昨年まで多摩大学教授を務めていた久恒啓一氏は「50歳までは『青年期』。新しい人生戦略を50歳で立てるのは、まったく遅くない」という──。(1回/全3回)

※本稿は、久恒啓一『50歳からの人生戦略は「図」で考える』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

サムズアップするビジネスマン
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50歳という年齢に棲んでいる「魔物」の正体

50歳という年齢には「魔物」が棲んでいる──。こうつぶやいた人物がいます。その人物は、53歳で従業員数900名を超える中堅企業の社長の座を後進に譲り、自らは「魔物」から逃れるために人口1万人の地方の町に単身移住して、まちおこし事業を行うスタートアップ企業を立ち上げました。

2013年の高年齢者雇用安定法の改正で希望者は65歳まで働けるようになり、今年のさらなる改正によって70歳までの就業が視野に入ってきました。仮に50歳でのポテンシャルが100であるとすると、退職時は落ちても70ぐらいまでだろうから、「何とかなるだろう」というささやきがどこからか聞こえてきそうです。

実際、大企業で働く9割の社員は定年後、再雇用を選ぶといわれています。同じ会社で働き続ける方がストレスもリスクも少ないとの判断のようですが、それは本当なのでしょうか。前述の人物は、それを「魔物」だといいます。

なぜ「魔物」なのか──。今の時代、その声に従った途端に「何とかならない」状況に陥ってしまうからです。DX(デジタルトランスフォーメーション)をはじめ社会の急激な変化に対応するため、多くの企業が経営の構造改革を進める一環として早期退職の募集を始めています。真っ先にその対象になるのが50代です。

多くの企業が、日本型雇用制度の中核をなす終身雇用を維持することが困難になり、それぞれの職務を明確にして成果を評価する「ジョブ型雇用」を採用し始めています。50代の人が過去の実績をもとに「昔の名前で出ています」的に生き延びようとしても、「昔の名前のままならいらない」とされてしまうでしょう。50代にとって「何とかなるだろう」とはいっていられない時代に突入しようとしています。

冒頭で紹介した人物は、会社の規模を10年間で従業員数20名から900名以上へと右肩上がりの成長を実現した実績があるので、「昔の名前で出ています」でコンサルタント業や顧問業を始めるとの選択肢もあり得たでしょう。

しかし、まったく逆の選択をしました。人生が終わるときに100を上回っていたい。そのために50歳を過ぎても成長を続けたいと、成長せざるを得ない環境にあえて自分を置きました。

そこには、人生に対する一つの考え方が表れています。「50代は人生の後半の始まり」ととらえ、あとは力が徐々に衰えていくことを受け入れて生きるのか。それとも「50代こそ新たな人生戦略を立てるとき」ととらえ、人間としての完成に向かってさらなる成長を求めて生きていきたいと望むのか。

もし、あなたが後者のような生き方をしたいと考えるのなら、主体的に今後の人生の戦略を立て、ライフデザインを描く必要があります。