※本稿は、久恒啓一『50歳からの人生戦略は「図」で考える』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
定年退職した元秀才たちに覇気がない理由
昨年、郷里の大分県中津市で久しぶりに開かれた中学校の同窓会に出席しました。参加した旧友たちを観察していると、70歳にして意気盛んなのは小さいながらも会社を経営している自営業者や医師たちで、いわゆる秀才タイプでそれなりの会社に進み、定年退職して、今は何もしていない連中は総じて元気がありませんでした。
人は、個人としての自分である「個」、仕事を通じて社会で何らかの役割を果たしている自分である「公」、家庭や友人などプライベートな人間関係の中での自分である「私」の3つの側面で成り立っています。
自営業者や医師たちが、壮年期から実年期に入ってからも、地域で「個」と「公」と「私」のバランスをとりながら、それぞれのライフワークを追求し続けているのに対し、覇気のない元秀才たちは、「公」から離れた途端、「個」としてのアイデンティティーまで曖昧になってしまったのでしょう。というより、「公」の世界で仕事を続けながら、「私」の世界はともかくとしても、「個」としての存在意義への自覚が希薄なまま退職に至ったといった方がいいかもしれません。
ビジネスパーソンが、壮年期や実年期に入っても活き活きと日々を送るためには、漫然と定年を迎えるのではなく、これまでの人生の棚卸しをし、人生戦略を立て直し、ライフデザインを描き直す事前準備が必要です。その方法として私が提案するのが「人生鳥瞰図」の作成です。
そのとき判断の基準になるのは、「自分にとっての豊かさとは何か」ということです。より豊かな人生を求めて人生戦略を立て直すとき、進む方向をどのように判断し、選択すればいいか。それには、経済、時間、肉体、精神の4つのキーワードがかかわってくるのです。