仕事のデキる人は、どんな能力を身につけているのか。多摩大学名誉教授の久恒啓一氏は「仕事で成果を上げられるひとは、図を用いたコミュニケーションがうまい。私自身、図解を身につけたことで、会社員から大学教授へ転身できた」という――。(第2回/全3回)

※本稿は、久恒啓一『50歳からの人生戦略は「図」で考える』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

オフィスでチームにプレゼン
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どういう能力があれば仕事の成果が上がるのか

私は、1997年、47歳のときに大学教授に転身するまでは、日本航空で20年以上働いてきました。その間いつも念頭にあったのは、どういう能力があれば仕事の成果が上がるのかという問いでした。大企業で労務、広報、企画などの仕事を経験してきた私の結論は、3つの能力が備われば会社の仕事はできるということでした。3つの能力とは、「理解する(理解力)」「考える(企画力)」「伝える(伝達力)」です。

理解力とは、収集した情報の重要なポイントを理解する力です。企画力とは、自分の頭で新しい考えやアイデアを生み出す力、つまり収集した情報をもとに付加価値のある情報を創造する力です。伝達力は、そういった情報を他の人に的確に伝える力です。

これら3つの力はコミュニケーション能力ということもできます。理解と伝達は他人とのコミュニケーションであり、企画は自分自身とのコミュニケーションです。ビジネスの本質はコミュニケーション活動にあります。

メーカーを例にとってみても、まず、開発部門は顧客のニーズや声を聞いて製品を開発します。製造部門は関係各部門との調整が不可欠です。購買部門は取引先とのコミュニケーション活動抜きには仕事ができません。

宣伝・広報は文字通り、コミュニケーション活動が仕事です。人事部門は社内の人材を縦横斜めに流動化させるためのコミュニケーション活動を行うセクションです。その他の間接部門も「社内顧客」とのコミュニケーション活動によって業務が成り立ちます。経営者は社内外におけるコミュニケーションがうまく対流しているかを常に点検し、整備するためのコミュニケーション活動を行っているともいえます。

相互理解を妨げる「箇条書き信仰」

一般的に、ものごとを簡潔に整理して理解したり、考えたり、相手に伝えようとしたりするとき、多くの人が用いるのが文章と箇条書きです。会社内で次々と作成される報告書、企画書、稟議書、連絡書など「書類」と名のつくものは、おおよそすべてが文章化されています。社会に出て仕事をする上で、「文章を上手に書けることが重要なスキルである」と、寸分も疑わずに仕事をしてきた人が大部分でしょう。

しかし、文章を書き、それをもとに議論すると、細かな言葉の使い方などに深入りすることになって徒労感にさいなまれることも多いでしょう。いわば「文章地獄」です。また、ものごとを構成する重要なポイントなどを箇条書きにすると、わかりやすく整理されたような気がするので、箇条書きを自明のこととして多用してしまう。ビジネス文書は箇条書きにするものと信じて疑わない。「箇条書き信仰」といってもいいでしょう。

文章は、文脈という線の上でものごとを表現しなければなりません。また文脈や読み手に合わせて文体をはじめ単語や言い回し、「て・に・を・は」や接続詞の使い方など、細かい部分に気を配らなければなりません。実際、文章はかなり複雑な表現方法で見通しがきかないだけに、矛盾があったり曖昧なままでも、自分でも気がつかなかったり、レトリックでごまかしたりすることが多いのです。