人と議論をするときも同様です。相手と自分の言い分が対立しているとき、紙に論点の全体像を描きながら、その論点についての相手の言い分と自分の言い分を図解してみるのです。すると、どの部分が共通点で、どの部分が対立点かが明確になり、歩み寄りが可能なポイントが浮かび上がってきます。それを提案すると、相手も納得してくれることが多いのです。
部分と部分の関係を描いて結びつけることによって全体像が浮かび上がる。あるいは、全体の構造を描いてみることによって、それぞれの部分が関係づけられる。図を描いてみると、「木を見て森を見る」と同時に「森を見て木を見る」ことができて、しかもそれがひと目で見渡せるようになるのです。
すべてはマルと矢印で表現できる
「図解思考」の特色に続いて、図の描き方の基本について説明しましょう。用意するのは、A4サイズの用紙と鉛筆、消しゴムです。パソコンを使う場合もありますが、手描きのほうが思いどおりに描くことができます。パソコンを使うと見かけはきれいな図が描けますが、スペースの中に収めようとして文字数が制限され、それに合わせるため短く箇条書きにしてしまいがちです。
鉛筆を使うのは、描いては消し、また描いては直しと繰り返し、少しずつ進化させることができるからです。濃いめの鉛筆がおすすめで、消しゴムも必需品です。
用紙は横向きにします。横向きのほうが空間が広く感じられ、思考も自由に広がりやすくなります。縦向きにすると、上から下への一方的な流れしか描けなくなり、思考が縮こまる恐れもあります。
図解で使う記号は、基本的にはマルと矢印です。三角や四角を使う場合があるかもしれませんが、あまり堅苦しく考えず、マルの変形だと考えればいいのです。
テーマに沿って思いついた要素を書き出したら、共通項のあるもの、似たような内容や性質を持ったものごとにまとめて、ぐるっとマルで囲みます。そのマルにタイトルをつけます。共通項や類似性がひと目でわかるキーワードがタイトルになります。
これで一つ固まりができます。いくつかの固まりができたら、それぞれの大きさを考えます。実際に大きいものや重要度の高いものは大きなマルに描き直します。このマル同士で、互いの関係を考え、マルの配置の仕方で、それぞれの関係・構造などを表現します(図表2)。
大きなマルが小さなマルを含む構造の「包含」、隣り合う「隣接」、重なり合う「交差」、それぞれ独立した関係を表す「分離」、対比を示す「並列」、親会社と子会社の関係のような「郡立」など、さまざまなパターンで構造が表現できます。
ちなみに、四角よりマルのほうが印象がソフトになり、人に受け入れられやすくなります。マルと四角を混在させる場合も、マルはマル同士、四角は四角同士、同じレベルで統一することが大切です。