米国ではオンライン診療の有料会員が約5000万人

米国も同様だ。米国ではオンライン診療サービス最大手テラドック・ヘルスが5000万人近い有料会員を抱える。米アップルも腕時計型端末「アップル・ウオッチ」に心電図機能を搭載。米グーグルが米病院運営大手と提携している。

インドの調査会社マーケッツアンドマーケッツによると、IoT(モノのインターネット)を医療に応用する市場は25年には1882億ドル(約20兆6000億円)と20年の2.6倍に膨らむとの予測もあり、海外ではコロナを機に規制を緩和した政府の動きもあり、市場の争奪が活発化している。

日本の民間企業では規制の緩い海外の事業を先行させている。

ヘルスケア事業を強化している三井物産は累計で約3000億円を投資している東南アジア最大の病院グループであるIHH(マレーシア)などでオンライン診療を導入している。すでに対象地域は8カ国・地域まで広がっている。診断以外にも処方した薬を自宅に届けたりするなど、先行導入したインドではオンライン診療の受診件数が、1日平均で約400件に上るという。

AIを活用し、入院前に治療費の目安を示すサービスもシンガポールで導入した。IHHは約3000万人分の診療データが保有されており、患者の症状や年齢を基に診療前に費用を予測し、患者が安心して治療を受けられるようにしている。

大手医療機器メーカー「日本医師会を刺激したくない」

医療機器を手がけるオムロンも遠隔診療のサービスを欧米やシンガポールで先行して始めた。4月に参入した英国では患者が自宅で測定する血圧値を電子カルテと接続し、異常があれば医師や看護師に知らせる仕組みを提供している。

両社ともオンライン診療の恒久化を見越して今から海外で治験を積むことで将来の国内事業参入を目指しているが、「日本医師会を刺激すると、機器納入などに悪影響を起こしかねない」(大手医療機器メーカー)との声も多い。

ようやく日本でも「かかりつけ医」がいない場合でも一定条件をクリアすれば初診からオンライン診療を認めることを決めたが、「政治がどこまで医師会の抵抗を振り切ってオンライン診療を解禁するか見通せない中で積極的に投資しづらい」(大手商社)という状況だ。

コロナ禍で医師不足に伴う医療逼迫を声高に叫びながら、オンライン診療を認めない医師会の既得権益や業界と一体となった「岩盤規制」をどう切り崩して、高齢化が進む日本の医療改革に踏み出すか。ここでも政治の決断が迫られている。

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