新たなビール需要に応えたい
スプリングバレーの出だしは好調だ。4月の製造数量は当初の計画よりも3割増産し、出荷を行っている。
間木さんは、販売数量の成果に手応えをつかみつつも「普段クラフトビールの飲用機会がないお客様にも、飲んでもらえるようなブランドに育てたい」と抱負を語る。
「既存のビールや新ジャンル商品は定番であり、いわば『日常のど真ん中』に位置しています。要は仕事帰りの一杯や、スーパーでの『ついで買い』などライフスタイルのシーンに根付いている。他方、近年ビールの価値観が多様化し、よりおいしいものや、普段飲んでいるものとは違った商品を手に取りたくなるニーズも増えてきました」
「キリンビールとしてもスプリングバレーを『いつもよりちょっといいビールで、非日常感や高級感を味わいたい』というお客様の声に応える商品として訴求していきたい。これまで飲んでいただいた8割くらいのお客様は、クラフトビールを普段あまり飲まないユーザーという調査も出ており、まずは1本『スプリングバレー』を手に取ってもらうのを目下の目標にしています」
「新しい価値を提供し続けられる」ブランドに育てたい
「一番搾り」(ビール)、「本麒麟」(新ジャンル)そして今回の「スプリングバレー」(クラフトビール)の3ブランドが揃い踏みした。競合他社の追随に屈せず、キリンビールが首位を守り続けるために、今後どのようなビール事業を展開していくのだろうか。
「何度も言葉にしていますが、やはり『お客様に新しい価値を提供し続ける』ことが重要だと考えています。ビール類は成熟市場で、今後著しく市場規模が拡大する状況にはありません。その中で、ブランドをお客様に手に取り続けていただくためには、ブランドを持続的に育成し、強固なものにしていかなければなりません。『一番搾り』や『本麒麟』といった既存ブランドに関しても、お客様の深い理解にこだわって、今後も期待に応えられるよう進化していきたいと考えています」
「また『スプリングバレー』についてはクラフトビール市場の裾野を広げ、クラフトビールの飲用機会の活性化に繋げていきたいですね。というのも、ビール類全体のうちクラフトビールの販売出荷数は1%にも満たない。これを1.5%にまで引き上げることができれば、ビール業界全体の盛り上がりにも寄与できる。クラフトビールを通じてビール自体をより魅力的なものへと発展させ、『スプリングバレー』のコンセプトである『人はビールで感動できる』を体現していきたいです」