政治家や医師会が、ついに矛先を若者に向ける

そして、2020年の秋を迎えるころ、ドカーンとデカいボリュームゾーンの悪者が定着した。「若者」である。医師会や知事たちは「若者が元気に動き回って高齢者に感染させる」という説をふりかざし、若者悪玉論を蔓延させた。テレビの情報番組では、屋外で酒を飲む若者の姿をモザイク付きで紹介し、司会者やリポーターは「あーっ、マスクを着けていませんね!」などと批判した。

しかしながら「そこまで若者と高齢者が接しているか?」と考えると、疑問もある。厚生労働省が発表した「2019年 国民生活基礎調査」によると、3世代世帯の割合は、大阪府が2.5%で、東京都は1.8%なのだ。そもそも高齢者の感染経路はカラオケ喫茶や介護施設などが多いというデータもある。いずれも高齢者同士の接触をまず疑うべき場所ではないか。しかも施設の場合、職員はみな、感染対策に必死に取り組んでいる。小池知事は「防ごう重症化 守ろう高齢者」のフリップを掲出して若者に自制を求めたが、これを見て私は「あ、小池さん、高齢者の支持を集めるべく票田を取りにきたな……」と感じた。

票田にならない人々が悪者になる

初期の「アクティブジジイ・ババア」と「都会人」はネット上の中傷なのでさておき、「屋形船」「タクシー」「ジム」はメディアがつくった悪者だ。そして医師会・政治家が悪者にしたのは、「夜の街」「ライブハウス」「K-1」「若者」などである。野党が悪者にしたのは「Go To トラベルキャンペーン」と「Go To Eatキャンペーン」(とくに2021年3月以降の宮城県)だ。

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医師会・政治家は客や票田にならない人々を狙い撃ちにして、また野党は政府の失政を叩くために、あえて「悪者」をつくっているように見えて仕方がないのである。もはやコロナ対策は、完全に政治的思惑と絡み合ってしまった。もっとも、これは世界的に共通する事象であろう。たとえばアメリカの場合、共和党の知事が治める州はマスク着用を義務化せず、民主党の知事が治める州は義務化する傾向がある。

コロナ対策と政治的思惑との兼ね合い、ということでは東京五輪の動静も注視しなければならない。聖火リレーが開始したとき、先頭を走るスポンサーのDJカーに乗っている人々がマスクをしていなかったことが批判された。そもそも聖火リレー自体が「密」をもたらす催しだとして批判の対象になっている。