訪問診療はコロナに感染して自宅療養をする人にも本当に対応するのか

では、双方にどのような違いがあり、前出のニュース番組でやっていたように訪問診療はコロナに感染して自宅療養をする人にも対応してくれるのでしょうか。

埼玉県越谷市で4年ほど前に訪問診療をメインとした「ファミリークリニック越谷」を開業した西田雄介医師(36)に話を伺いました。

「ファミリークリニック越谷」の西田雄介医師(写真=本人提供)

「まず知っていただきたいのは、『訪問診療』は基本的に在宅で介護を受けられている患者さんに対する医療ということです。いっぽう、『往診』は介護とは関係なく突発的な病変に対応するものです。いわば救急医療に近い。訪問診療は計画的な医療サービス。突発的な事態に対応するものではないのが前提となります」

社会の高齢化に対応し、介護保険制度が施行されたのが2000年。介護に医療はつきものであり、2006年ごろから国は在宅医療を推進。そのため在宅時医学総合管理料といった診療報酬の改定(病院診療より報酬が多い)を行ったことで増えてきたのが「訪問診療」です。

その違いで理解しやすい例を挙げるとすれば、往診は「患者と医師との人間的つながり」があって成立するのに対し、訪問診療は「患者と医師が契約関係」にあることでしょう。

「在宅介護を受けている方の多くは何らかの疾患を持っています。通院できる方はいいですが、なかには体の状態が悪く、通院が困難な方もいます。そうした方のためにあるのが訪問診療です。訪問診療医は患者さん本人や家族、またその患者さんを担当しているケアマネジャーさんなどから連絡を受け、相談のうえ定期的に訪問して診療するのです。介護と医療の違いはありますが、イメージとしては訪問介護や訪問看護といった介護サービスの形態に近いといえます(介護サービスは介護保険適用、訪問診療は医療保険適用)」

コロナを含む病状急変の場合は365日24時間対応が可能な訪問診療医も

訪問診療には3つのルールがあります。

(1)基本的には月に2回、決められた日に訪問し、診療、検査、薬の処方などを行い、療養上の相談も受ける。
(2)病状が急変した場合は365日24時間対応で訪問し必要に応じて入院の手配を行う(医師によっては24時間対応をしていないケースもある)。
(3)医師の拠点の半径16キロ以内の家が対象(16キロ以外は医療保険が適用されない)。

この条件に合致し、納得した患者、家族と契約を交わしたうえで行うのが訪問診療です。

「(2)の連絡を受けて行う緊急訪問は往診に近いといえます。ただ、患者さんとは契約に基づく関係があって診療を行うというのが大きな違いですね」

では、コロナに感染して自宅療養をしている人は診療の対象になるのでしょうか。

「訪問診療は介護の方限定ではないですし、医療は誰もが平等に受けられるものでなければなりません。ニュース番組で紹介された医師も通常は要介護の方を診ている方だと思いますが、私もコロナで自宅療養されている方から連絡を受ければ診療に行きます。ただ、現在、担当している患者さん宅に行く時間以外に訪問する形になります」