「在宅死」をかなえるには、どれだけの「介護力」や「経済力」が必要になるのか。都内で「しろひげ在宅診療所」を営む山中光茂医師は「独居、年金暮らしでも在宅死はできる。介護力や経済力は必要ない」と断言する。いったいどういうことなのか。ジャーナリストの笹井恵里子さんがリポートする――。(第14回)
(左から)看護師の武田里絵さん、医師の山中光茂さん、ドライバーの所遼太さん
撮影=笹井恵里子
(左から)看護師の武田里絵さん、医師の山中光茂さん、ドライバーの所遼太さん

「自分にそんな介護力はない」と思ってしまう人たち

今秋、読売新聞「人生案内」に、60代女性がこんな相談を寄せていた。

<夫が倒れて入院し、様々な病気で転院を繰り返して退院できないまま寝たきり状態に。最近人工呼吸器が必要になり、「家に帰りたい」と(夫は)口の動きで訴えている。医師は「これ以上良くなることはない」と言う。(自宅では)介護サービスを利用しても、夜は私一人。仕事もやめなければならない。「できないことはない」でしょうが、とてつもない労力が必要かと思う。病院で行われていることを家でできるのか、家に帰ることで余計に苦しまないか、考えれば考えるほどわからなくなる>。

実際に私がこれまで終末期の患者や家族に取材した中でも、「もう有効な治療法はありません」「この後はどうしますか」などと医師から言われ、悩み苦しむ声を多く聞いてきた。どうしますか? と問われても、皆どうしたらいいかわからないのだ。たとえ家で過ごさせてあげたいと思っても、自分にそんな介護力はないと思ってしまう。

しかし、東京都内で常時1000人超の在宅患者を診療し、年間200人もの看取りを行う「しろひげ在宅診療所」院長の山中光茂医師は正反対のことを述べる。「自宅で安らかに死ぬ」ために、「介護力」や「経済力」は不要というのだ。

重要になるのは「在宅診療所」の選び方

山中医師はきっぱりとこう話す。

「身寄りがない独居、年金暮らし、重症な病の方に在宅医療を行うことは十分可能です」

自宅で死ぬ場合、医師が定期的に訪問診療を行い、患者の最期を看取る。一般的にそういった医師を「訪問医」「在宅医」などと呼び、その医師が集まる診療所を在宅診療所という。

それでは、安心して身を任せられる「在宅診療所」をどのように選べばいいのだろうか。

大きなポイントとしては3つ――「医師が患者や家族からの相談を24時間受け付けているか」「往診をしているか」「重症患者でも診ているか」である。