費用は月2回の定期訪問と24時間緊急対応で月平均6000~7000円

西田医師によれば、訪問診療は別の側面でコロナ禍の医療に貢献しているといいます。

「本来は入院させたほうがいい患者さんもいますが、訪問診療を受けることでそれを回避し、病床を空けることにもつながります。また、感染を恐れて通院を控え、病状を悪化させてしまう方もいますが、そうした方々にも訪問診療は役立っていると思います」

利用者として気になるのは、訪問診療でかかる費用です。

「患者さんの疾患や病状にもよりますが、基本的な月2回の定期訪問と24時間緊急対応で医療保険1割負担の方の場合、月額平均6000円から7000円といったところです。また、特別な医療処置が必要な場合は費用が加算されることもありますが、自己負担上限額(1割負担で1万2000円)が決められており、それ以上かかることはありません。薬の処方は病院と同じですし、ご自宅までの交通費もいただいていません」

要介護者が通院する場合、福祉タクシーを利用すればかなりの金額がかかりますし、付き添う家族の負担も大きい。それを考えればむしろ費用負担は少ないといえるでしょう。なお、西田医師のクリニックでは医師と看護師あるいは助手の2人ひと組で、クルマで患者宅を訪問するそうです。

心電図、エコー検査、血液検…提供する医療の内容も病院と遜色なし

「最近では、医療機器もコンパクトになっており、訪問診療でもさまざまな検査ができるようになりました。必要に応じてですが、その場で心電図も取りますし、エコーの検査もします。血液検査は検体を検査会社に出す必要があり、タイムラグはありますが、多くのデータが取れるのです。また、電子カルテがiPadに入っているので、そうしたデータを示しながら患者さんにご説明することもできます」

フェイスマスクをつけた医療チーム
写真=iStock.com/AnnaGarmatiy
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自宅のベッドにいながら高度な医療を受けられ、病変があれば入院の相談も受けられる。この安心感は大きいでしょう。

「医師の立場として訪問診療が良いと思うのは、患者さんがどのような環境で療養されているかが見えることですね。ちゃんとお薬はのめているか、居室やベッドの状態はどうか、改善点があればアドバイスできる。こうした部分は療養されている現場を見なければわかりません。患者さんの実際の生活環境を診察の場とする訪問診療だからこそできる医療があります」